34 / ここに居ること ページ35
side M
「……電話、かけてきていいんだよ」
「………し、ごと…でしょ、…りーだ…、」
「掛けなおすとか出来るよ。……そんな声で呼んじゃうくらい苦しいなら、電話かけてよ」
こんなに優しくされたことがなくて、どう反応すればいいかわからない。
でも、心のどこかで
求めていたものなのかもしれない、なんて思うんだから
心底めんどくさくて、嫌になる。
「どうした、何を考えてたの？」
「……なんにも、」
「うそ。手震えてるよ。……携帯、見れなかった？」
未だに携帯に伸ばした手が震えてるのを見て
彼はすぐに察したらしい。
急かすことはしないのに、言葉を待ってくれる彼の瞳が
自分の気持ちを人に言うなんて怖くてたまらない僕の癖を、解そうとしてくれる。
「……携帯、見ようと…したんだけど、」
「うん、」
「仕事の、こと……だったらって、思ったら、……なんか、手…っも、息も…っ」
「うん、手震えて息も苦しかったか、」
その瞬間に戻ったみたいに、また震えて苦しくなる。
考えただけでこんなのなんて、僕こんなに弱かったっけ。
声も出なくて、数回頷くしか出来ないのに
彼は汲み取ろうとしてくれる。
” ちがう、ちがうんだよ。”
” ごめんね、こんなのきっと、めんどくさいよね。”
そう言いたいのに、
それさえも言葉に出来ない。
「……そんな顔すんな。めんどくさくないよ」
ずっと頬を拭ってくれていた彼の手が
髪へずらされてそんな言葉が降ってくる。
そっと抱きしめてくれる前の
哀しい、哀しい顔が頭から離れない。
「めんどくさかったら、たった2時間だけ来たりしないよ」
「……ごめ、ね、……僕、……っ」
「大丈夫。……大丈夫だから、俺が居ることに慣れてごらん」
10年以上、20年近く一緒にやってきた彼からの
そんな、親しくなったばかりみたいな言葉に
胸が苦しく疼くような、でも温かく解れるような。
リーダーが思ってたようなタフな僕なんかじゃなくて
こんなに弱い僕も居ることに気づいてもらえたようで
それに、不覚にも安心してしまって。
でも
今までの、必死に地に足を付けて
自分に言い聞かせながらやってきた僕に戻れなくなるような
そんな不安も、どこかに渦巻いていた。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
