1270 / 表現をすること ページ45
side S
智くんと俺に挟まれて、おいしそうにゆっくり食べる潤。
和食屋さんのワンプレートは少し多いから
俺と半分こ。
いつものこの子にとっては少し多い量の大豆の炊き込みご飯を
この子の小さなお椀に分けてあげる。
他のものは、ひとつのお皿のまま半分こ。
ゆっくり食べるこの子に合わせて
俺らもゆっくり食べていると
くいくい、と服の裾を引っ張られて。
「ん？」
振り向いた先のこの子の表情は、
何か言いたげで戸惑ってるもの。
「なぁに？どした、言っていいよ」
俺を見つめていた目が逸らされて、きょろきょろして
でも手は、くい、と俺の服の裾を掴んだまま。
がんばって言おうとしてることはわかってるし、
葛藤してるのもわかってるから待ってたんだけど。
潤「や……やっぱり、な、なんにもないよっ、」
戸惑ったようにそう吃ってしまって
きゅ、と目を瞑って俯いてしまった。
「じゅーん？」
潤「んーん…っ、じゅん、なんにもない…っ」
「ふふ、ほんと？お顔見せて潤、」
服の裾を掴んで俯いたまま、ふるふると首を横に振るから
そっと頬に手を添えて促すと、潤んだ瞳と目が合う。
涙まで浮かべちゃうってことは、
きっとこの子の願望や欲望が絡んでるんだろう。
出来れば聞き出したい。
言おうとしてくれたこの子の勇気を無駄にはしたくない。
潤「じゅん、なんにもないもん…」
「ふふ、何かあると思うんだけどなぁ」
潤「…………だって…、」
「大丈夫。言ってごらん？翔くんは潤の気持ちが知りたいよ」
一般的に些細なことでも
この子からしたら自分の欲を伝えるなんて大変なこと。
それを最近は、伝えようとしてくれる。
知りたいと思ってること、
伝えても怒らないこと。
いろんなことを知ってほしい。
潤「………しょ、……しょおく、」
「うん、なぁに？」
掴まれてる服の裾が、ぎゅう、とさらに強く掴まれてシワになる。
手も微かに震えてる。
がんばれ。
この旅行中、この子は確かに
いろんなことで、ひとつ歩を前に出してる。
1271 / 言葉の向く方向→←1269 / 彼の世界の新入りさん
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1363人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆかり - 続きお願いします (2022年9月11日 22時) (
レス) @page17 id: c109875420 (このIDを非表示/違反報告)
ヲ伽 -otogi-(プロフ) - チョコミン党。さん» とてもうれしいお言葉ありがとうございます🥲普段当たり前のことを少しでも特別に感じていただけているのなら幸いです☺️木漏れ日で心が温かくなっていたらいいなと思います、、✨いつも読んでいただきありがとうございます✨ (2022年9月1日 18時) (レス) @page24 id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコミン党。(プロフ) - 木漏れ日を読んでいて、いつも何気無く過ごし感じている事を文字という形になって理解してみると…何だか全く別の様に感じます。私は感じ取る事等が苦手なのですが、木漏れ日を読むと、5人とヲ伽様の言葉を読むと、スッと心に入ります。有難う潤くんヲ伽さん。🎂 (2022年9月1日 0時) (レス) @page27 id: 8558ed1b24 (このIDを非表示/違反報告)
ヲ伽 -otogi-(プロフ) - nyanさん» nyanさん、ありがとうございます💭一度深く感じたことって消えないですよね。なかなか言葉にできない、そして共感者が居ないそれを、木漏れ日が少しでも寄り添えていたらいいなと思います🍀 (2022年8月31日 3時) (レス) @page25 id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
nyan(プロフ) - 何年経っても消えることはないそれ 。がメインで心に来ました。わかる人がいる。って救われます。 (2022年8月30日 20時) (レス) @page27 id: 2c77e9de22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年8月2日 17時
