木漏れ日より、愛を込めて -20-

880 / ヒビは戻らないから ページ30

side O




30分ほど意見交換していれば、一旦止んで

少しの沈黙が出来れば

溜めていた水が溢れたように、ニノが口を開く。




和也「……………やっぱりさ、追いつかなかったんだろうね…
……あの子にとって、進むスピードが一般的な学校って…」




温かいお茶が入った、目の前のコップを見つめ

思いにふけるように言葉を落とす。




人一倍ゆっくりなあの子は

一般的なスピードには追いつけない。




「…………それが、あの子のスピードなのにね」




きっと、その当時から変わってない。

あの子にとっては一生懸命必死にがんばっても

それは ”違う” と一蹴される。




上達の速さや周りと同じように動くことで

努力の度合いを測られる世の中だから。




雅紀「…………周りに溶け込むのが異常に上手いのも、
……………その怖さとか痛みを知ってるからだろうね」

翔「…………知らなくていい痛みを、……人一倍持ってるんだろうな」




人一倍壊れやすいのに

人一倍怖さや痛みを知ってる。

それを受ける入れ物は、ずっと昔にひび割れてるのに

そこにぎゅうぎゅうに押し込んで。




潤「………………………んー……っ、」

雅紀「あらら、目、覚めちゃった？」

潤「…………………な、で……いな、の……」

翔「ごめんね、ベッド戻ろっか」

潤「んーんっ、や……、みんな、とこ……いるー……っ」

「みんなベッド戻るよ？みんなで寝よ、ね？」

潤「んー……っ、かずー……っ」

和也「ん、おいで、だっこしよ」




ぽやぽやしながら目を擦って

ゆるく両手を広げる彼。

抱き上げられた彼は、もう眠りに落ちてる。









今は、彼のその入れ物が

俺らの数だけ増えていたら

それほど、願うものはなくて。

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