木漏れ日より、愛を込めて -20-

867 / 保身 ページ17

side A




潤「かけたーっ！」

翔「お、完成！」




最後の種類まで書き終えると

わーいって手のひらをすべて合わせてかわいく拍手。




潤「ちゃんと、わかるかな、？」

和也「うん、潤くんががんばって書いたんだもん、わかるよー？」

潤「んふ、ありがとっ、…………ね、つぎは、これだけ？？」

「ん？」

潤「つぎは、あの……、そういう、おはなしも、するかな……？？」

智「んーん？しないよ、大丈夫」

潤「そっか、よかったっ」




いつそういう話をしなきゃいけないのかって心配なんだろう。

まだやっぱり、カウンセリングっていうと

そういう話をする場所って認識は外れないみたい。




潤「ふふっ、できたねー？」

翔「出来たね？潤出来るもんね〜」




何かが出来る度にとても喜んでるのが

やっぱり愛おしい。




ソファでうれしそうにしてる潤ちゃんは

テレビを見ながらもルンルン。




だけどその表情は

徐々に徐々に、真顔になっていく。




潤「……………ね、」

「ん？」

潤「…………みんなは、がっこ……いった、？」

智「うん、そうね、行ったよ」




テレビで小学校のことがやってたから

そのせいで疑問になったのかと思ったんだけど

んー、って考える彼を見てたら、そうではなさそう。




和也「どしたどした…、おいで、」




眉を八の字にして考え込む彼を抱き上げて膝の上に乗せてあげたニノは

そっと頭を撫でる。




潤「んー…………、あのねー…………、」

翔「ん…？」

潤「……………あのね、みんなに……、うそ……」

智「うそ？」




俯いて

声が、小さくなっていく。




潤「……………がっこ、いったって…、おはなし、」

「うん、かずからそう聞いたよ」

潤「……………ほんとは……ね、……がっこ、いってない……っ」




微かな、

ほんの微かな

聞こえなくなるくらいの声で。




少し、震えて。




和也「ん、そっかそっか」

潤「…………うそ、ごめんなさ…っ、」

和也「んーん、いいよ、大丈夫」




小学校行ってない、って

普通じゃないと感じることを言えなかったんだろうな。

小学校行った、って言ったのは

彼の精一杯の保身。

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