56 / 唯一の術 ページ11
side S
「でも…っ、でもあの日、松潤話してたよ？
収録で、嵐の昔のこと話してた……っ、」
何も言えなくなった俺らとは違い
取り乱した相葉くんが、前のめりになってそう落とす。
「ええ、そうね。
それまでもそうだったでしょう？
覚えてなかったのは前日だけじゃないの。
それまでも、潤の中の嵐としての記憶は、徐々に抜け落ちてた」
「じゃあどうやって……どうやって話してたっていうの…」
「………あの子ね、毎日…
…………明日の自分にビデオメッセージを残してた」
″ 昨日の俺 ″
″ 今日の俺 ″
死鏡に浮かんだその文字が、
脳内に蘇る。
「夜、そのビデオメッセージを撮って
朝起きたら、自然とビデオメッセージが流れるように設定する。
それで昨日の自分が語った今までの自分の記憶を、
必死に繋いでたの」
「……っ、」
「私には見せたことがないわ。
ただ、話してくれた。それがあるから大丈夫だって」
熱い。
熱い。
体が熱い。
潤の真実を知れば知るほど
体は、信じられなくなるほど熱を持つ。
「あの子ね、忘れたままのことがたくさんあるの。
母親のことだって、自 殺したってことは覚えてるけど
その原因が、自分の未知の病気だってことは忘れてた。
中学は普通に卒業したって言ってたと思うけど、
本当は友達の名前を忘れてしまっていじめられて行けなくなったの。
…………あの子はそれも忘れてた」
ひとつ、ふたつと流れるおばあちゃんの涙。
嫌なことは忘れてしまえ、なんて言うけれど
本当に忘れてしまえば
それは幸せでもなんでもなく
ただただ、残酷なものになる。
嫌な記憶があってこその人生だ。
嫌な記憶があってこその自分だ。
それがないなんて。
忘れたことに、気付きもしないなんて。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - ともさん» 読んでいただきありがとうございます´`*。綺麗に丸く収まる、というお話ではないので、そこから何か感じていただけたことうれしく思います。 (2021年3月17日 11時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 上手く言葉に出来ませんが…5人の愛が、絆が深くて強くて…悲しいとは違う何かが…表現出来なくてすみません。久しぶりに泣きました。 (2021年3月17日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
ヲ伽 -otogi-(プロフ) - nyanさん» 悲しいお話の中にある優しさとか、そういうものを感じ取っていただけて嬉しいです。読み返していただきありがとうございます(*^^*)累乗は結構難しかったので、好きって言っていただけて嬉しいです！( 笑 ) (2020年9月22日 21時) (レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
nyan(プロフ) - なります。改めて読んでもやはり泣いてしまいますね。２５０文字では納まりきらなくてごめんなさい。ちなみに、『累乗』も好きです♪ (2020年9月22日 21時) (レス) id: 2c77e9de22 (このIDを非表示/違反報告)
nyan(プロフ) - 実は私、このお話が一番印象に残っています。最初に読んだ時はボロボロに泣いてコメント出来なかったのですが、やはり気になって。潤くんの想いと、翔くんの切なさと愛しさ、三人の優しさ(って言って良いのかな) が、苦しいくらい愛おしくて、五人全員を抱き締めたく (2020年9月22日 21時) (レス) id: 2c77e9de22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽 -otogi-
| 作成日時：2020年5月12日 21時
