49 / 枯れた水溜まり ページ5
side A
智「潤ちゃん。どうしてそんなこと言うの？
そんなこと言っちゃダメなの、分かるよね？」
潤「やだ…っ」
智「やだじゃない。ちゃんと聞いて？」
腕をがっしりと掴んだリーダーから逃れようと
必死に体をうねる潤ちゃんだけど
リーダーの力が強いのか、全く効果がない。
無理に視線を合わせようとするリーダーに
潤ちゃんが、どんどんパニックになっていく。
潤「やだ、きかない…っ！
よくなったら、もっと、ひとりだもん…っ
もっと、みんな、はなれてくでしょ…？
よくないときのほうが、みんな、そばにいたもん…
それならおれ、よくなんなくていいっ！
もっ、やなの…っ」
ポタ、と
布団に一粒、
彼の涙が零れた。
彼はそれを救うようにして
布団ごと持ち上げ、自分の顔を覆う。
視界が揺れる。
彼の痛みが、ナイフになって突き刺さって
心が切り裂かれる。
彼の回復を願ったくせに
心の回復には、目を向けてなかった。
彼が俺らを思って向けてくれる笑顔の裏にある
寂しさや苦しさ、不安を
俺らは汲み取らなかった。
彼が言わなきゃいけなかったんじゃない。
頑張ってる彼の心を、
耐えてる彼の心を
俺らが、汲み取らなきゃいけなかった。
彼を信じることは、頼っていいことじゃない。
俺らの考えが甘く、頼ってしまったから
彼の心のバランスが、壊れてしまったんだ。
智「……潤ちゃん、…ごめんね…、苦しかったね、」
潤「やっ、だ…」
智「ん、やだね…ごめんね、」
どうすればいいか分からなくて
みんながそっと潤ちゃんに触れると
フルフルと、避けようとする。
彼の居場所のために、と仕事の信頼を守ってきたけれど
一番大切な、彼の信頼を失くすなんて。
いつも彼は
触れることが大好きで
触れることで落ち着いて
そんな姿を見てきたはずなのに。
仕事なんかよりも
彼が守って欲しいのは
俺達の温もりなのに。
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作者名：つむぐ
| 作成日時：2019年6月27日 16時
