63 / 焦点 ページ21
side N
次の日。
起きた潤くんは、
リーダーと翔ちゃんからのメッセージを読んで、
先生が持ってきてくれた朝ごはんを食べて
ここまではいつもどおりに過ごした。
その後はリハビリの時間で、車椅子に乗ったまではよかったけど
行こう、と俺が言うと
潤くんは、首を縦に振らなかった。
「あれ、どうした？嫌になっちゃった？」
潤「…いたい、の。うで、ね？きのうので…」
「あぁそっか…腕痛めちゃったか」
雅紀「昨日頑張ったもんねぇ、今日はお休みしようか」
潤「でも…、でもっ、れんしゅう…」
相葉くんが、お休みしようと言うと
潤くんが焦ったように否定する。
「潤くん、焦んなくていいんだよ？」
潤「でも、おれ…っ、あるけ、なきゃっ…、」
潤くんと目を合わせるようにしてしゃがみ、
何故か焦っている彼を落ち着かせようとする。
けれどそんなの効果なくて、
不安で瞳をユラユラと揺らし、
今にも泣きそうな顔でそう口にした。
雅紀「ん？どうした…？」
不安定な潤くんに
頭を撫でてあげながら相葉くんがそう問うけれど
潤くんの瞳は徐々に
焦点が合わなくなってくる。
やばい、と
自然にそんな感情が出てくる。
「じゅーんくん、潤くん、俺見て？」
潤「ん、ん…？…、かず…」
「そう、分かる？かずの方見て？」
潤「ん、ちが…、あるけ…な、きゃ…ね…？」
質問と答えが合ってない。
焦点も全く合わない。
ダメだ。
どうして急に？
何が潤くんをこうさせたんだ。
潤くんがこんな状態になったのを見たことがない相葉くんは、
不思議な顔して戸惑ってる。
相葉くんに、
潤くんの背中から毛布を掛けて俺も一緒に包んでもらうように指示すると、
戸惑いながらも動いてくれて。
俺が言った通りにしてくれた。
「潤くん。潤くん？かず。分かる？」
潤「…ん、…？」
抱き締めてあげたいけれど
今俺が視界から消えると、まずい。
何とか温もりが伝わるようにと、
目だけは合わせながら、
頭を撫でて潤くんを呼び続ける。
「じゅーんくん…、」
潤「……か、ず…」
数分呼び続けていると、
やっと潤くんの焦点が合った。
「潤くん。分かる？かず。ね？」
潤「ん…」
「じゅーんくん？かずの方見て？」
潤「…、かず…？」
「うん、かず。やっと目が合ったね…」
潤くんの瞳に、やっと自分が映ったのを確認してから
ぎゅ、と抱き締めてやると
次第に、肩を震わせて泣き始めた。
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作者名：つむぐ
| 作成日時：2019年6月27日 16時
