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第六話:懐疑の深緑 ページ7

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オスマンこと、押田(おすだ)万尋(まひろ)は困惑していた。

彼は生徒会選挙を取仕切る選挙管理委員会の委員長である。他のどの委員長よりも生徒会に一番近い立場に居た彼は、生徒会長であるAとそれなりの付き合いがあった。

故に、困惑していたのだ。


『──という事で、選挙管理委員会委員長である君にもこの計画に参加してもらいたい』


誰よりも規則に厳しかったはずの彼女による、【桐ノ院学園校則改革計画】に。

参加してくれ、と言われれば答えはYESだ。彼も桐ノ院学園の品格と伝統という体裁を守る為の厳しい校則を嫌う一人だった。だが、素直に首を縦に振れないのには理由があった。

「どういう風の吹き回しや。君は誰よりも校則の不変を望んでた人物やろ」

彼の知る限りでは生徒会長程校則を守ってきた人物は居なかった。だが、そんな彼女が急に改革をすると言うのだ。懐疑の念を抱くのも無理はなかろう。

細められた深緑の瞳が揺れながら深紅の彼女を射抜く。当の本人は彼の懐疑の視線を物ともせず、何時もの鉄面皮を貼り付けたままこう言ってのけた。


『生徒の望みに応えるのが生徒会長の役目だろう』


強気に煌めく葡萄色の瞳。濁りという概念が存在しない彼女の瞳に今度はオスマンが射抜かれる番だった。外交官という異名を持つ彼でも、今まで彼女の根底にある感情が読み取れたことは無かった。だが、先程彼女が発した言葉には純粋な決意が滲み出ていた。

今まで散々暴君として振る舞ってきたくせに。でも、そんな彼女の言葉に絆されてしまう自分も確かに居て。


相変わらず最低限の感情しかなくて不気味やけど、この暴君にだったらもう少しついて行ってもええかな。


「ええよ、その計画に協力しても」
『そう言って貰えて喜ばしい限りだ、押田選挙管理委員会委員長』


改革の歯車がまた一つ動き出した。




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第七話:白と深緑→←第五話:会議は踊る



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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます! (2020年9月13日 13時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き!シナリオ面白いです(*´∇`*)本当に!いい展開! (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー!ありがとうございます!!女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…! もう、好きです!(2回目)無理しない程に頑張って下さい!応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鶴木 | 作成日時:2020年7月20日 22時

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