第四十三話:承認 ページ48
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校庭の解放を承認する為に参加した人狼ゲームは村人側の勝利で終わった。
どうやら私が倒された後、鳥井と鬱島が合流したらしいが、人狼側の勝利目前のところで鬱島がガバってしまい呆気なく敗れてしまったらしい。
彼自身はゲーム終了後の感想会で「ガバってもうたぁ〜…!」と頭を抱えていた。
「まー、大先生のガバガバプレイは今に始まったことじゃないやろ」
「せやなぁ、元気だしぃや」
シャオロンと天乃が交互に鬱島を慰める。だが、私は何か引っかかるものを感じた。
『……"今に始まったことじゃない"?』
その瞬間、その場に居た全員の肩が跳ね、一斉に私から目を逸らした。
『成程、君達は以前から校庭を無断で使用していたんだな』
私がそう言うや否やシャオロンが慌てた様子で弁明し始めた。
「ちゃ、ちゃうんやA!これには深いワケが…」
『ほう、どんな理由だ?』
「それは〜…」
口篭るシャオロン。別に私は怒るつもりで言った訳では無いのだが、日頃の仕返しということで暫くこのままにしておこう。
すると、その場で凍り付いたように動かない他メンバーの中から、一人だけこちらに歩み寄ってくる者がいた。
「生徒会長」
特徴的な低音。それは以前聞いた時とは打って変わり、芯のある真っ直ぐな声となって私の鼓膜に響いた。何処と無く威圧さえ感じられる声色は前の人生の最期───破滅エンドを迎えた時に聞いたものと近しいモノになっていた。
『グルッペン・フューラー…』
自分の声に殺気が混じるのが分かった。それでも彼は物怖じせず、柘榴のように真っ赤な瞳に私を写していた。
「無断で校庭を使用した事は謝罪しよう。だが、これら全て彼等が俺の為にやってくれていた事だ。だから、頼む。彼等を責めないでくれ」
依然として落ち着き払った様子で佇むグルッペンの声に切実な色が滲んだ。
責めるも何も、端から怒っていないのだが。
『別に責める気は無い。言ってくれさえすればそれなりの対応はした、という話だ』
「…え?」
『何だその顔は。元より校庭の敷地は有り余っている。近々、縮小工事でも頼もうかと思っていたんだが…手間が省けたな』
「待ってくれ、それじゃあ…」
グルッペンが徐に口を開く。その瞳には歓喜の色が混じっていた。
『君達が有効に使ってくれるなら、こちらからも願ったり叶ったりだ』
私がそう言った途端、先程の凍り付きようが嘘のように歓声が上がった。
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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます! (2020年9月13日 13時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き!シナリオ面白いです(*´∇`*)本当に!いい展開! (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー!ありがとうございます!!女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…! もう、好きです!(2回目)無理しない程に頑張って下さい!応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶴木 | 作成日時:2020年7月20日 22時