第十話:民主化 ページ11
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『私から提案がある』
そう言ってAが挙手をすると、一斉に上座へ視線が集まる。Aは臆すること無く、一つ息をして良く通る声で言葉を紡いだ。
『生徒会選挙を民主化させるのはどうだろうか』
ざわっ、と主に生徒会役員がざわめく。
「具体的には?」
そんな中、ざわめきを突破ってオスマンがAにそう問掛ける。Aはよくぞ聞いてくれた、と言わんばかりに意気揚々と話し出した。
『まず選挙権を全校生徒に拡大。勿論、被選挙権もだ。投票式の多数決で生徒会長及び役員を決め、生徒会長による推薦は廃止する』
「待って下さい!」
がたん、と大きな音を立てて立ち上がったのは、生徒会役員の一人。生徒会の中でも特にAに心酔しており、Aに対してとても盲目的な信仰を寄せていた。そういえばこんな奴が居たな、と冷淡な事を思いながら、Aは彼に視線を投げる。
『何だ、何か問題でも?』
「問題しかありません!貴方様は無責任な一般生徒に学園を任せると言うのですか!」
ぴくり、とAの眉が動く。
───あぁ、まさか、ここにも時代錯誤な奴が居たとは。
Aが取り巻く空気の温度が徐々に下がっていく。そんな事を気にも留めず、先程の生徒は発言を続けた。
「生徒会は聖域でなくてはいけません。誰にも侵されることの無い絶対的に高潔な執行機関、それが生徒会です。なのに貴方様は、俗的な思考を持ち、命令されなければ動くことも出来ない癖に自由だ何だと騒ぎ立てる能無しで生徒会を構成しようと言うのか!」
生徒がそう言い放った刹那、一気に会議室の温度が下がった。比喩では無い、本当に室温が急激に低下したのだ。鋭い冷気が辺りを満たし、生徒達がガタガタと震え始める。件の生徒も顔を青くして震えていた。
「……A…」
寒さで震える唇を何とか動かし、ひとらんは咎めるように、冷気の発生源であるAの名を呼んだ。しかし、当の本人は聞こえていないのか、はたまた、それどころではないのか。未だ冷気を発したまま、生徒を睨め付けていた。
『……改革をすると言った手前、私は誰の意見も無碍に出来ない。だから、どんな反対意見でも真摯に受け止めよう。───だがな、貴様の先程の発言とその思想、些か過激が過ぎるぞ』
Aの剣幕に件の生徒だけでなく、他の生徒やエーミール、ひとらん、オスマンでさえも震え上がった。
「…っ、申し訳ありません、生徒会長…」
件の生徒はAに対して為す術もないまま、着席した。
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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます! (2020年9月13日 13時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き!シナリオ面白いです(*´∇`*)本当に!いい展開! (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー!ありがとうございます!!女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…! もう、好きです!(2回目)無理しない程に頑張って下さい!応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶴木 | 作成日時:2020年7月20日 22時