第八話:懐古の深紅 ページ9
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沈黙が流れ、ただ二人の髪の揺られる音が微かに響く。
「……分からへん。相変わらず感情は読めへんのに、言動は今までと全然違う。変わったのか変わってへんのか。何も分からへん」
オスマンは独り言のように言葉を紡ぐ。
「ひとらんはどうなん？」
オスマンがそう問掛けると、ひとらんはスコップを片付けながら考え込む素振りを見せた。
「俺は、何も変わってないと思うんだよね。確かにしようとしてる事は今までとは全く違うけど。自分の理想を追い求めて、形振り構わなくなるところとか、Aらしいなぁって思う」
そう語る彼の横顔は何処か懐かしい眼差しをしていた。「でも、」とひとらんは続ける。
「俺、ちょっと嬉しかったんだよね。Aに頼られて。高校入ってからAが頼ってくれることなんかめっきり減ったからさ、中学の頃に戻ったみたいで、嬉しかったんだ」
オスマンとひとらん、Aは同じ中学校の出身だった。当時三人は生徒会に所属しており、勿論、Aは生徒会長だった。彼らは今と打って変わり、協力し合って全校生徒を纏め上げていた。
ひとらんはAに頼られた事が、中学時代に戻ったようで嬉しかったという。
またオスマンの頭に深紅が過る。気高く傲慢な赤ではなく、無邪気でどこか危なっかしい鮮やかな赤。
『オスマン』
「何も変わってない、か……」
「うん。だからさ、もしかしたら昔のAも今のAもそんなに変わってないんじゃないかって」
ただ、理想を追う方向を間違えてしまっただけで───
ひとらんはそう付け足した。オスマンはいつもの饒舌はなりを潜め、黙りこくってしまっている。
「マンちゃん」
ひとらんの声にオスマンは顔を上げる。マスクを外したひとらんと視線がかち合う。黒曜の瞳は真っ直ぐと深緑の瞳を見つめた。
「心配しなくても大丈夫だよ。Aは強いから」
「…！」
その言葉を聞いた瞬間、今までオスマンの胸の中を支配していた焦燥感が消え去った。
「そっか、そうよなぁ。うん、ありがとひとらん」
ぱっと上げられたオスマンの顔は晴れやかだった。その様子を見てひとらんは人知れず胸を撫で下ろした。
「なんかスッキリしたらお腹空いちゃっためう〜。帰りにケーキ屋寄ってもええ？」
「お、いいよ。正門前で待ってる」
いつか、昔みたいにAも誘えたらええなぁ……
赤い西日を見詰めながらオスマンは漠然とそう思った。
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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます！ (2020年9月13日 13時) (
レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き！シナリオ面白いです(*´∇｀*)本当に！いい展開！ (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー！ありがとうございます！！女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります！！ (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…！ もう、好きです！(2回目)無理しない程に頑張って下さい！応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。＠変人系カップル＆シトラ教教組さん» ありがとうございます！頑張ります！ (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鶴木 | 作成日時：2020年7月20日 22時
