第三十三話:再開の黄色 ページ36
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「いらっしゃい、随分と大所帯やねぇ」
『すみません、しんぺい神先生。騒がしくはさせないので何卒』
「ええよええよ。じゃ、そこ座って。鼻血止めよか」
しんぺい神先生の言われた通り、彼の前に置かれた丸椅子に腰掛ける。
下を向かされ、渡された保冷剤で眉間辺りを冷やす。暫くそうしているとダラダラと流れていた鼻血が止まった。
『しんぺい神先生、止まりました』
「お、早いなぁ。んじゃ、他の傷の手当しよか。どこ怪我したん?」
『大きな傷があるのは腕と腹部、あとは顔ですね』
「あー、ほんまや。モロに食らったやろ?くっきり痕になっとるで」
『やはり。道理で痛むわけだ』
赤く腫れてしまった頬を念入りに冷やした後、消毒液を染み込ませたガーゼで優しく傷を抑えられ、大きめのガーゼを貼られる。食事の邪魔になりそうだ。
その他の患部も同じように丁寧に治療してもらい、絶対安静を言い渡された。
治療を終わらせたしんぺい神先生は、会議があるからと過保護四人組を連れて保健室を出て行ってしまった。ぽつんと取り残され、やることが無くなる。別に帰っても良かったのだが、その時の私は何故か保健室から動こうとしなかった。
暫く保健室を見渡していると、ふと一番端のベッドにカーテンがされている事に気がついた。
体調不良者だろう、と頭の中で決め付け、いよいよ暇を持て余し始めた私は丸椅子から腰を浮かせた。その時、
「おい」と声が掛かった。
保健室を見渡すが、私以外の人間は見えない。はて、気の所為だったかと保健室を出て行こうとした時、再度声が掛かった。
はっきりと聞こえたその声は気の所為なんかでは無かった。
もしや、と使用中のベッドに近付き、一思いにカーテンを開け放つと、記憶に新しい黄色と視線が合った。端正な顔には大きな湿布が貼られている。
『もう大丈夫なのか』
「顎にあんな蹴り入れといてよう言えたな。まだ頭痛いわ」
『だったら寝て居ればいいだろう』
「お前よくムカつくって言われん?」
シャオロンが分りやすく顔を歪めるのを横目に、私は近くにあった丸椅子を引き寄せて座った。
「……なに腰落ち着かせとんねん」
『引き止めたのは君だ。話があるんだろう?』
「やっぱ、お前ムカつくな」
彼は口を尖らせ眉間に皺を刻むが、私が動かないと察し諦めたように溜め息を吐いた。
「……お前、手ェ抜いとったやろ。なんでなん」
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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます! (2020年9月13日 13時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き!シナリオ面白いです(*´∇`*)本当に!いい展開! (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー!ありがとうございます!!女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…! もう、好きです!(2回目)無理しない程に頑張って下さい!応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶴木 | 作成日時:2020年7月20日 22時