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第三十話:狂犬 ページ33

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「おい。あの一年、生徒会長相手に一歩も引かねぇ……」
「一年も凄いけど、生徒会長は流石だな…傷一つ付いてない」

光線が煌めき、稲妻が迸る。両者一歩も引かない一進一退の攻防戦を見詰めながら、観客は口々に感嘆の声を零した。

誰もが二人に魅入る中、上の方の観客席に座ったひとらんとオスマンは格技場全体を眺めながら冷静な顔付きをしていた。

「……マンちゃん、どう思う?」

ひとらんが問い掛ける。オスマンは薄らと睫毛から深緑を覗かせた。

「あの一年、遊ばれとるな」

格技場を駆け回るシャオロンをその深緑に捉えながらオスマンはそう答えた。

Aが光線を放てば、シャオロンがそれを避ける。シャオロンがシャベルを振り下ろせば、Aは魔法石を砕いてそれを防ぐ。

傍から見れば、両者どちらも譲らない良い勝負に見える。だが、オスマンとひとらんの二人にはそれが違って見えた。

「A、わざと照準ずらしとる。多分、一進一退の攻防戦を演出するために」

オスマンの言う通り、Aはシャオロンが避けられるギリギリの軌道に光線をずらし、恰も彼が紙一重で攻撃を避けているように見せていた。

そうする事で、観客を盛り上がらせながらシャオロンを確実に追い詰められる。彼女の目的はただ単に勝つことでは無い。シャオロンの闘争心をへし折り、勝利することが目的なのだ。

そうしている間にもシャオロンには徐々に体力の限界が近付いていた。

肩で息をしながら、Aの猛追を防ぐ。段々足元が覚束無くなったところを、此処ぞとばかりに光線が襲い掛かり、シャオロンの右脹ら脛を抉った。

「い"ッ……!」

思わず患部に意識が行く。それを見逃さなかったAは更なる攻撃を仕掛けた。

無尽蔵、とも取れる手数の多さにシャオロンは最早攻撃を防ぐことしか出来なくなって行った。堪らず膝を付く。額から流れた汗が地面に染みを作った。

『もう終わりか?』

攻撃の手を止めたAが問い掛ける。彼女の周囲には魔法石が浮かんでおり、何時でも攻撃が再開できる体勢になっていた。



────終わり?

そんな筈無い。

まだ戦える。まだ戦いたい。

体力は限界。

手数も技術も向こうの方が遥かに上。

だけど、もし、この状態を逆転出来たら……?



「そんなん100%注目の的やん。


───最ッッッ高に美味しいわ!!」



バチッ、と稲妻が煌めく。

爛々と黄色の瞳を輝かせ、立ち上がるその姿はまさに────


『────狂犬、か』




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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます! (2020年9月13日 13時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き!シナリオ面白いです(*´∇`*)本当に!いい展開! (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー!ありがとうございます!!女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…! もう、好きです!(2回目)無理しない程に頑張って下さい!応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鶴木 | 作成日時:2020年7月20日 22時

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