第二十話:主人公再び ページ23
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「椿木さん、呼ばれてるよ」
三時限目終了のチャイムが鳴り、教材をしまっていると、ろくに話した事も無いクラスメイトに話し掛けられた。いや、厳密に言うと呼び出しの仲介か。
わざわざ教室まで私に会いに来る人物は限られている。きっと生徒会役員の誰かだろう。
クラスメイトに礼を言い、私を呼び出した人物の元へ向かうと、真っ先に金髪が飛び込んできた。見たくも無かった、憎らしい程美しい金糸の髪。
『………は?』
何故、貴様が此処に居るんだ。
『グルッペン・フューラー……!』
───────…
『それで、話とはなんだ』
随分と威圧的な態度になってしまったが、この際許して欲しい。何せ接触を避けようと決意した矢先の出来事なのだ。これくらいは許してくれるだろう。
目の前の少年は私からの威圧に若干気圧されつつも口を開いた。
「昨日、いじめられていたところを貴方が助けてくれたと聞いた。今日はそのお礼がしたくて……」
ありがとう、と視線を落としたまま言うグルッペン・フューラー。
彼がいじめに遭っていた事は知っていた。だが、自分を打ち倒した張本人がここまで弱っていると拍子抜けというか。なんだか、妙な気分になる。
現に、造形の整った顔を俯かせるグルッペン・フューラーに、悪役を倒した主人公の面影は何処にも無かった。
『……君にお礼をされる筋合いは無い』
何故なら、私と君は敵同士なのだから。
それに、ヒーローならばもっと強かで居るべきだ。
『そんな情けない姿で言われても嬉しくも何ともない』
私がそう言い放つと、俯かせていた顔を上げ、鮮やかな赤を見開いていた。
『もしどうしても私に礼を言いたいなら、せめて背筋を伸ばしてから来い。君は男だろう、そんなに縮こまって恥ずかしくないのか』
そう言って彼の横を通り過ぎる。彼は何も言わず、私の背中を見詰めていた。
──────────
「やっぱ生徒会長怖いなぁ……グルさん?」
「……カッコイイ…!」
「グルさん!?」
私が去った後、グルッペン・フューラーがその紅い瞳に憧憬の炎を宿していたのを私が知る由もない。
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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます! (2020年9月13日 13時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き!シナリオ面白いです(*´∇`*)本当に!いい展開! (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー!ありがとうございます!!女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…! もう、好きです!(2回目)無理しない程に頑張って下さい!応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶴木 | 作成日時:2020年7月20日 22時