願いが叶うのならば Ⅳ (ページ30)

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光が帰るのを見送り、俺もさあご飯食べるか、なんて思っていると

涼介からゴロゴロと痰が絡む音が聞こえて、慌てて涼介のそばに駆け寄る

宏太「りょう、苦しいね～吸引しちゃうね」

まだ着替えすらしてなくて、スーツのままだけど気にせず、

涼介の喉に繋がっているチューブの青い蓋をあけ、
管を穴に差し込んでかき回すと、じゅるじゅるっ、と痰が取れた

だけど一度痰を絡め取ってもまだ少し苦しそうで、
さらにもう一度蓋をあけて吸引をした

自発呼吸のほとんどない涼介は、吸引の間呼吸を助けてくれるものがなくて少し苦しそうにするのが見ていられなくて

少しだけ、悲しくなる

宏太「りょう、苦しいのなくなったかな？」

なんて聞くと、涼介は瞬きをパチリ、としてくれた

言葉を発することができない今はこれがコミュニケーション

あとははい、いいえ、の会話だけじゃなくて、文字盤を使ってさらに会話ができるようになるのが今の目標なのだ

宏太「ん？お話する？」

涼介の視線が文字盤に向かっているような気がして、文字盤の準備をした

宏太「……な、、は…？ん…？

りょうごめんもっかい」

文字盤は練習を重ねなきゃうまく使えなくて、こうしてお話にならないことがまだまだ多い

涼介に合わせて文字を追ってみるけれど、涼介がどこを指してるのかうまく伝わらなくて

伝わらないことがもどかしいのか、声は出せなくても口をパクパクさせて、話をしようとしてくれるけどうまくいかず

しまいにはぽろぽろと涙が溢れてきてしまった

宏太「りょう…ごめんな…」

体力を使った涼介はそのまま寝てしまった

涙の跡を見て、弟の気持ちすら分からない自分の存在がたまらなく悔しくて

ブルーな気持ちで、ひとりぽつん、とごはんを食べた