願いが叶うのならば Ⅳ (ページ29)

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時の流れは止まってくれず、涼介は高校3年生になった。

18歳。世の中の高校3年生は就職か進学か、なんて話をしている頃だろうか。

涼介は数ヶ月前、重度の呼吸困難を起こして、気管切開をした。

今は、指先と足をかすかに動かせる程度で、ほとんどベッドの上で寝たきりの状態

口には唾液を吸引するための細いチューブが常に刺さっていたり、

トイレも行けないから、機械とつながっている尿器を利用して涼介の負担を減らしたり、

少しでも楽に生活できるよう模索中

学校にも通えず、週に3日訪問教育をしてもらう生活に切り替わり
それに伴って俺が仕事の間は、ヘルパーさんにきてもらうことになった

常に俺がそばにいてやれないことで寂しい思いをさせてしまっている気がするけれど、

24時間介護をすることの負担や、経済的なことを考えると、この形がベストだと言われた

宏太「ただいまー」

仕事を終わらせ、夜なのにむしむしするのに鬱陶しさを感じながら帰宅

すると、ヘルパーの光の「おかえり」なんて声が返ってきた

ヘルパーさんをつけるとなった時、たまたま中学の同級生だった光と出会って、光になら任せられる、と頼むことにしたのだ

光「夜ご飯せっかくだし作っておいたよ」

宏太「うわ～サンキュ、りょうただいま」

ベッドに横たわり俺が帰ってきたのを目で追う涼介に声をかけると、

おかえり、の意味を込めて2回瞬きをして、ニコッと笑ってくれた

まだ顔の筋力は衰えが少なくて、こうして笑顔が見られるのが救いなのだ

光「今日はちょっと体調悪くてね、吸引してもずっとゴロゴロ苦しそうだったから、夜も注意してあげて」

宏太「そっか、辛かったな…

了解。明日もよろしくね」

光「じゃあね、りょうちゃん、また明日」

なんて光がりょうの頭をぽんぽん、と撫でると、嬉しそうにまた笑った