願いが叶うのならば Ⅳ (ページ11)

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17時、

定時で仕事を切り上げて、いそいそと学校へ向かう

この会社に入って、まだ2年目の新米だけど
涼介のことも、家族のことも理解してくれる少し小さめな会社で、本当に助かっている

宏太「失礼しまーす」

ガラガラっと、カラフルに彩られた保健室のドアを開けると

ベッドで涙をぽろぽろと流し小さくなる涼介と
それを横で声をかけてくれている八乙女先生の姿

涼介は特に身体を触られるのが怖いみたいで、
八乙女先生はそれをわかってくれて、背中をさすることはしないでいてくれる

光「やっぱり不安定みたいで、
お昼頃まではそわそわしてただけだったんですけど、

ここ1時間くらい、こんな感じで…」

宏太「すいません、ありがとうございました」

ペコリと、頭を深く下げると、八重歯をチラリと見せて
にこりと笑ってくれた。

宏太「りょうすけ、おまたせ、こうにいだよ。」

ベッドの横に腰掛けて顔が見えるように覗き込んで、
そっと、涼介のふるえる身体を抱きしめる

涼介「…っ、こうにぃ、、」

宏太「そうだよ。ちょっとしんどくなっちゃったね？」

涼介「…っん、、っう、、っはぁ…はぁっ…、！」

強く抱きしめても涼介の震えは止まらず
涙がぽろぽろと、雨のように流れている

宏太「ゆっくり息しようねー、だいじょうぶ、すーはーだよー。ね？」

抱きしめながら、耳元で声をかけながら背中をさすること15分

少しずつ落ち着いたみたいだ

宏太「そろそろ、おうち、帰れるかな？」

涼介「…っん、、だい、じょぶ…」

宏太「ゆっくりでいいからね」

涼介「…こぅに、、」

宏太「んー？」

涼介「こうにい、、の…て、、あんしん、する……」

そう呟いて、ほんのすこしだけ、
ほんのりと笑顔を見せてくれた

こんなにもすべてが怖くて、怯えて過ごす日々の中で

俺のおかげで、安心する、と言ってくれたことは初めてで、

そっか、よかった、なんて笑って誤魔化したけれど

俺は、涼介とのこの先を信じてもいいんだな、なんて思える、そんな一言だった