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すっかり日も落ちて、街にあかりが灯りだす頃。


ようやく私たちはカフェを出た。





光くんはたくさんの話をしてくれた。



この間実家に帰ったこと。

紬ちゃんとお母さんが、光くんに内緒でプリンを食べていたこと。

新しい洋服を作ってみたこと。




本当にたくさんの話をしてくれた。











私のことは、何も聞かずに。



















「めっっちゃおいしかったね!!」


『〈うん!〉』




早くから灯りだしたイルミネーションを横目に、光くんを眺める。

私の視線に気がついたらしい彼は、私を見つめ返した。




「...どうしたの?」


『〈......聞きたいことがあって〉』


「なに?」















『〈...光くん、手話勉強した?〉』




少し前から気になっていたこと。

スマホを介して会話をすることが圧倒的に減った。

もう一回お願い、と言われることが減った。


手話を理解するスピードが上がった気がする。














「...佐倉萌?」


『〈ううん、私が気になってたこと〉』





萌ちゃんに教えてもらったんだ。

それか、萌ちゃんが使ってた教材もらったのかな。


まだ下調べのことを引きずっているらしい光くんに、少し笑みが溢れる。





『〈勉強、してくれたの?〉』




数秒気まずそうに視線を彷徨わせた彼は、小さな声で呟いた。




「...ちょっとだけ」




普通に会話できるレベルは、ちょっとじゃ身につかないよ。


なんて言葉は、笑みの代わりに飲み込んで。




『〈昔ほどじゃないけど、スムーズにコミュニケーションが取れて嬉しい〉』


「...昔って?」


『〈声が、出てた頃〉』








ゆるりとしていた歩みが、少しずつ落ちる。


周りの人が、先程より速いスピードで動いていく。








遂にその脚は、歩みを止めた。










光くんは遠くの何かを見つめていて、私の方を見てはくれない。








見てくれないと、伝えられない。










ふたりの間にある壁が、目に見えてしまった気がした。






「...ねえ」





その声は、私ではない誰かに放たれたようだった。

どこか遠くにいる、誰かに話しかけたような、声。





「...声が出せるとか、出せないとか」

「それって、コミュニケーションにおける壁なのかな」





そうだよ。






「...その壁って、越えられないわけじゃないけど、越えなきゃいけないものなのかな」






...どういう意味?






「...越えなきゃ、分かり合えない、?」

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綺桜(プロフ) - 美桜さん» わあ!!!ありがとうございます!!!めちゃくちゃ嬉しいです...!!!がんばります!!! (2023年4月4日 18時) (レス) id: b46e876e49 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - silent要素もオリジナル要素もあってすごく惹き込まれます!どうか主人公が幸せになれますように…。更新楽しみにしています! (2023年4月4日 0時) (レス) id: 5680939f49 (このIDを非表示/違反報告)
綺桜(プロフ) - 夢乃さん» めちゃくちゃ嬉しいです!!!!ありがとうございます(T_T) (2023年1月3日 12時) (レス) id: b46e876e49 (このIDを非表示/違反報告)
夢乃(プロフ) - silent関連の小説で一番好きです。これからも応援しています。 (2022年12月23日 23時) (レス) @page42 id: fed228a0da (このIDを非表示/違反報告)
綺桜(プロフ) - 和季さん» 和季様、コメントありがとうございます!すごく励みになります!この先も更新頑張っていくので、ぜひ主人公の行方を見守っていただければ!と思っております(●︎´▽︎`●︎) (2022年12月3日 1時) (レス) id: 048786881e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綺桜 | 作成日時:2022年11月18日 0時

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