〖#１ 本気で愛した彼は音のない世界で生きていた〗 ページ1
side You
ふと、意識が浮上する。
建物に叩きつける雨の音で、目を覚ました。
そういえば、彼と再会したのもこんな雨の日だったなあ、なんて。
佐倉くんは、もう起きたのかな。
今日は一緒に出かけたりするのかな。
何気ない日常を思い描いては、その幸せに浸ろうとする。
それなのに。
彼のことを考える度脳裏にちらつくのは、高校時代の太陽のような彼女で。
嫌になる。
彼女のことも、彼女を思い出したことも、引きずり続ける私のことも。
これ以上深く考えちゃいけない。
そうわかっていても、私の頭は高校時代を鮮明に描き出してしまう。
楽しそうに声を出して笑う佐倉くん。
その愛おしそうに細められた瞳が捉えるのは、私
ではなく隣の彼女。
太陽のような笑顔を浮かべる紬ちゃん。
当時の私はどうかしていた。
彼女の傍を離れようとはしなかった。
それだけ紬ちゃんが好きだったのかと聞かれたら、すぐに否定する。
どちらかと言えば、嫌いだったのだ。
大嫌いだったのだ。
なんの悩みもなさそうな笑顔が、
火傷しそうな程のポジティブが、
うるさいくらいの声が、
全てが私を惨めにさせた。
そしてそれを全く理解せず、彼女は呼ぶのだ。
「A！」
呪いのようなその声で、私の名前を。
『…っ』
涙が一滴、瞳から落ちる。
何の涙なのかは、私にも分からなくて。
ただ、拭うべきではない気がした。拭ってはいけない気がした。
佐倉くん。
佐倉くん。
想、くん。
会いたい、
ああ、現実とはなんと残酷なのだろうか。
そのたった一言さえ、私の声として発させてはくれない。
喉を通り抜けた空気と、
空気を震わせることのなかった4文字が、
宙に溶けていった。
想くん、起きたかな。
メールが届いたことを知らせるランプが点滅しているのを横目に、私はもう一度目を閉じた。
メールには、気が付かなかったことにしよう。
きっと優しい彼は、許してくれるだろう。
音のない笑い声と共に。
雨は、さっきよりも激しくなっていた。
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綺桜(プロフ) - 美桜さん» わあ！！！ありがとうございます！！！めちゃくちゃ嬉しいです...！！！がんばります！！！ (2023年4月4日 18時) (
レス) id: b46e876e49 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - silent要素もオリジナル要素もあってすごく惹き込まれます！どうか主人公が幸せになれますように…。更新楽しみにしています！ (2023年4月4日 0時) (レス) id: 5680939f49 (このIDを非表示/違反報告)
綺桜(プロフ) - 夢乃さん» めちゃくちゃ嬉しいです！！！！ありがとうございます(T_T) (2023年1月3日 12時) (レス) id: b46e876e49 (このIDを非表示/違反報告)
夢乃(プロフ) - silent関連の小説で一番好きです。これからも応援しています。 (2022年12月23日 23時) (レス) @page42 id: fed228a0da (このIDを非表示/違反報告)
綺桜(プロフ) - 和季さん» 和季様、コメントありがとうございます！すごく励みになります！この先も更新頑張っていくので、ぜひ主人公の行方を見守っていただければ！と思っております(●︎´▽︎`●︎) (2022年12月3日 1時) (レス) id: 048786881e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綺桜 | 作成日時：2022年11月18日 0時
