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ただ、好きだった、 ページ3

校舎を、ゆっくりと歩く。

あの頃となんら変わりはないはずなのに、何故か全てが懐かしく映る。





苦しくて、悲しくて、忘れたくて、




大切だった、青春をなぞる。











開いた扉の奥には、窓の外を見つめる想くんがいた。




昔の癖だろうか、私の手は握られ扉を打った。




ゆっくりと、二回。


















やっぱり、貴方は振り向いてくれない。












ふと、想くんがこちらに視線を動かす。

彼の瞳が私を捉えたとき、その瞳は大きく揺れて。





「、A、ちゃ、ん」


『〈久しぶり、?〉』




想くんは少し手を上げて、けれど何かに気がついたように手を下ろした。



そのまま進められる足取りは、私の斜め前へと向かっていく。











《会いたかった、ずっと》

《会って、話したかった》




描かれた白い線は、美しい言葉を綴る。




同じように、そばに立つ。


緑の世界に、黄色を足していく。




《私は、会いたくなかったかも》







文字を目で追う彼の、悲しげな表情を見る。







ごめんね、の一言でさえ発せないのだから、この体は不便だ。






《どうすれば、Aちゃんと一緒に居られるの?》


《どうすれば、Aちゃんの隣に立てる?》


《どうすれば、Aちゃんの最後の彼氏になれる?》







想くんらしい言葉が綴られていくのを、ただ眺める。


何も答えられないよ。


何も答えたくないの。





答えちゃ、駄目なんだよ。







《ねえ、教えて》













《何しても、駄目だよ》







《何で》







《私は想くんを残しちゃうんだよ》





《それでいい》




《私が駄目なの》





《何で》






《想くんは、残された人間の気持ちなんて知らなくていいんだよ》











大切な人に残されるのは、どれだけ苦しいことなのか。

どれだけの絶望を背負うことなのか。

私は、身を以て知っている。




だから、大切なあなたには笑ってほしくて。







私のことなんて忘れて、幸せに過ごしてほしくて。




ただ、それだけで。











彼は、私のことを見つめて。








「...おれ、のこと、すき、?」






ゆっくりと、頷く。







「お、れも、すき」







知ってるよ、誰よりも。










「そ、れじゃ、だめな、の?」

















え、




その言葉は、かすれた吐息となって宙に浮く。








「すき、だから、いっしょにいたい」


「それ、じゃ、だめなの?」

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月紀 - 完結おめでとうございます。silentの作品の中で一番好きな作品で、切なさと儚さに愛を感じられる素敵なお話でした。これからも応援しております。 (11月27日 21時) (レス) @page6 id: 30b4bd6276 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 世界観がすごく好みの作品で大好きです。綺麗な言葉でつくられた世界に浸れました。完結おめでとうございます。 (8月10日 23時) (レス) @page6 id: 4b5070ea35 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綺桜 | 作成日時:2023年4月13日 23時

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