僕たちのアルカディア【イナイレ】 (ページ8)

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「紹介しよう。新監督の吉良瞳子君と、新メンバーの伊崎紅牙君だ」

　鬼道は新しくチームに入ることになった少年を興味深く見ていた。
　伊崎紅牙という名前は聞いたことがない。それなりに有名であるならば、メディアに取り上げられたり、独自の情報網で引っかかっている。
　しかし記憶のどこにも伊崎のいの字すらなかった。

「ちょっとがっかりですね、理事長。監督がいないと何もできないお子様の集まりだったとは思いませんでした」

「まあまあ監督。これから学んでいけばいいんですから、ね？」

「事実を言っているだけよ」

　うなじまで伸びた銀髪に、濁った碧色の目。色白。黒のプルオーバーパーカーと、白のスキニー。
　真剣な表情をしているが、少し笑みがこぼれている。
　それに自然に放った、俺たちのフォロー。

　彼は温和な性格のようだ。余程の一匹狼でもない限りこちらとしても接しやすく、すぐ雷門に溶け込むだろう。

「はっきり言いますが、本当にこの子たちに地球の未来を託せるんですか？彼らは一度、エイリア学園に負けているんですよ」

　監督となる彼女の言葉で、改めて現実を突きつけられた。

　自分たちよりも桁違いに強かった、レーゼ率いるエイリア学園ジェミニストーム。次々と倒れていく仲間たち。破壊された校舎。
　誰もが目を逸らしたくなる出来事を、俺たちはフットボールフロンティアを優勝した直後に遭遇した。

　まるで天国から地獄に突き落とされたかのように。
　絶望しない方がおかしいだろう。

「だから勝つんです‼︎」

　でも、それに諦めないのが雷門だ。

「一度負けたことは、次の勝利に繋がるんです」

「へぇ。良いこと言うじゃないか」

　円堂の言葉にニィと伊崎の口角が上がる。鬼道は伊崎の表面の感情しか読み取れなかった。

「頼もしいわね。でも私のサッカーは今までとは違うわよ。覚悟しておいて」

　吉良瞳子という監督は、雷門の新たな力を引き出してくれそうな感じがした。