欲の吐き溜め 短､中編集

涙 hjk(sior) ページ49

「キヨ、引くかもしれないけど聞いて。俺たち、付き合うことになったんだ。」

「ぇ。」

真剣な顔で話すフジ。
そんな横顔もかっこいい。
普段は笑顔だけど急にカッコよくなるとこも好きになったとこの1つ。

「そ。おめでと。」

「うん…そうだよね、ってえ！？」

「んだようっせぇな…」

めちゃくちゃびっくりするフジと五月蝿そうにしてるキヨ。
正直俺も驚いた。だってキヨってそういうの嫌いだもん。

「え、なんか有難う。」

「なんだよそれ。相変わらずお前ってキモイな」

「酷くない！？」

「えーお前らくっついたのか…なぁ､ラーヒー。こんな奴にするぐらいなら俺にしない？」

「ちょ、勝手に人の恋人取んないでよ!!?」

「じょーだんだって！真に受けんなよー！」

「心臓に悪いから辞めてくれ…」

「ふふふw」

動画のような2人のやり取りに思わず笑いが零れる。

「じゃ、俺邪魔になるだろうし帰るわ。」

「え。お前そんな気の利く奴だっけ…って痛い！止めて蹴らないで！」

ムカついたのかフジを何回も蹴るキヨ。
流石に可哀想なので止めさせる。

「まぁまぁキヨ。フジが可哀想だからそろそろやめよ？」

「…わーったよ。」

「なんで！」

最後に１回だけフジを蹴って靴を履きだすキヨ。

「靴履いてなかっただけマシと思えよ。…お幸せに。」

最後に一瞬だけ見えたキヨの顔は、歪んでいた。



身内にはほとんど話した後、やっと2人きりの時間になる。

ぼーっとしながら告白した時のことを思い出す。
泣きながら告白した時、抱きしめられて、OKされて、これからも、多分ずーっと、恋人として隣に居れて。

そう考えてた時、ふと目が熱くなった。

「ヒラ!?どうしたの？」

「あれ…おれ、泣いて…？」

熱く、ぼやけて見える。




…右目だけ。

「止まらないぃ…」

「え！？ちょっと待って！調べるから…」

調べると右目からの涙は嬉し涙、
左目からの涙は悲し涙らしい。

どうやら幸せすぎて泣いたみたいだ。

「良かった…」

その後涙は止まったが、それからは右目だけ涙脆くなってしまった。
流石にこれじゃ動画に支障が出る、ということで、最俺で集まって話した結果、治るまで少し頻度も時間も減らすことにした。

「そーいやキヨも左目だけ涙脆くなったらしいから、丁度いいな！」

そう言ってこーすけは笑ってた。
珍しいな。同じ位の時期で珍しいことが起こるなんて。

「なんか運命みたいだね〜」

「…そうだな。」

キヨの左目が少し滲んだ気がした。

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