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お湯に浸かった途端、小さく息をつく。
暖かいお湯に、感情の全てを奪われていく感覚。
この時だけは、何も気にしないでいられた。
俺のことを好きだと言ってくれるその人。
その人といると暖かい気持ちになるし、俺もその人を大切に思っている。
でもそれって、
愛なんだろうか。
風呂から上がって髪を乾かしていると、後ろからその人の温もりを感じた。
「ごめんね、勝手に触っちゃって。幼馴染さんの物」
ドライヤーを止めてその人の方へ向き直る。
「いや、俺こそ片付けてなかったのが悪いし。ごめんなぁ」
俺よりだいぶ低いところにあるその人の頭を撫でる。
ふわふわした、柔らかい髪。
アイツみたい。
「ね、仲直りにさ、しよ？」
その人の柔らかいのが俺のと軽く触れた。
まだ乾き切ってない髪を忘れて、その人の手の引っ張る方へと歩いた。
その足が寝室に向かっていると気づいたときに、止まればよかったのか。
「あのさ、廉くん前に言ってたじゃん。
幼馴染が使ってたベッドだから、寝室使うのは新しいの買ってからにしようって。
だからさ、私注文しておいたの。で、それが今日届いたの」
それでももう遅いか。
ガチャリとドアの先に並ぶのは、
アイツと俺のなんかじゃない、
その人と俺の、2人の部屋。
「ね、廉くん。私こっちに住んでもいい？」
真新しいベッドに腰掛けて、その人は小さく首を傾げる。
片隅に置いてあったはずの段ボールは、なかった。
多分、その人が中身見たんやろうな。
その人と付き合うと決めた時、しょおと俺の思い出を詰め込んだ段ボール。
「うん。ええよ」
多分、その人が捨てたんかな。
嬉しそうに笑うその人の唇に、そっとキスを落とす。
別の場所では幾度となくしてきたその人とのその行為。
なぁ、しょお。
俺、この部屋でお前に抱かれんの、夢やったんよ。
お前と、熱い夜を過ごして。
お前と、暖かい朝を迎えて。
夢やったんよ、ほんまに。
なのに、それなのに、
お前に抱かれてもないのにこの部屋で、
俺、別の人抱いてさ。
ごめん、許して。
ああ、でも。
もう俺に、興味なんてないか。
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作者名：むぎ | 作成日時：2024年2月24日 17時
