オムライス (ページ8)

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火をかけてるのを忘れて、ちょっと焦げた玉ねぎの入った生姜焼きを2人で食べた。
「てか平野さん、上京してきたって言ってたけど、出身どこなの？」
「名古屋、の田舎の方」
「遠いね」
「んー、ダンスがしたかったから」

俺さ、ダンスずっとやってたからそれ仕事にしたくて。振付師とか、ダンススクールの先生とか。ダンサーにはならなくても踊れるなーって思ってさー。でも、うまくいかなくて。

「それで、オモチャの会社に？」
「うん。知り合いのツテでなんとか入社して、なんとかやってるけど、やっぱ難しいもん。俺バカだし」
「それはなんとなく気づいてた」
「え、嘘」
「え、ホント」
店での様子見てると、あれ、この人ちょーっとおバカだなって何度も思うし。
まじかーってわしゃわしゃ頭をかく。
「ね、じゃあさ、俺と2人でダンススクール開こうよ。いつになるかわかんないけど。2人でお金貯めて、教室開いて、
時々大会にも出たりしてさ」
「、、、海人、踊れるの？」
「あれ、言ってなかったっけ。俺踊れるよ」
言いながら全国大会に出た時の動画を見せると平野さんの目と口がぱかっと開いた。
小さい時、姉ちゃんに憧れてダンスを始めた。学生の時はプロのダンサーになりたかったけど、家を継がなきゃいけなくて、結局諦めた。
でも、

「俺、平野さんと「俺海人と踊りたいっ！」、へ？」
「海人すげーよ、まじですげえ！大会出よ。ダンススクールも開こう。俺めっちゃ今の仕事頑張ってお金稼ぐわ」

動画をキラキラした子供みたいな目で見て、子供みたいにはしゃいで、ホント、子供みたいで。
「平野さんだーいすき！」
「おわっ！、」
席から乗り出して、俺は平野さんに抱きついた。
「約束だからね、平野さんと、俺の夢。忘れないでよ？」
「忘れない、絶対。、、、ね、紫耀って呼んでよ」
「紫耀」
「海人だいすきっ！」
「うわ、ちょ、力強すぎ！」

子供みたいな俺たちは、子供みたいに甘かった。