オムライス (ページ33)

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「え、、、、なんで」

しょおみたいな、掠れた声。あれほど水を飲んだくせに乾いた喉がおかしかった。

「おかえり」

俺に向かって微笑み、俺に向けて腕を広げて待っているしょお。

昔みたいに。

考えるよりも先に体が動いて、しょおの胸に飛び込んだ。
鼻腔をくすぐるしょおの、甘い香り。
勢い余った俺を、しっかり支えるしょおのがっしりした背中。

と言っても、俺の方が身長が高いせいで、側から見れば俺がしょおを包み込んでいるように見えるコレ。
きっさんによく笑われた。

『お前らイチャつくなよ！
　事務所には秘密なんだからな笑』
『ええやん。俺のリフレッシュタイムなんやから』
『あー、もう廉が可愛すぎる。信じられる、岸くん？あの廉が、永瀬廉が、俺の胸の中でリフレッシュしてんだよ？こんなの恋人の特権すぎて誰にも渡したくないわ』
『、、でも廉さ、毎朝俺の車乗る前俺にハグするよな？』
『、、俺風呂入ってくるわ』
『廉、後で話しあるから。で、岸くんはまた俺に怒られたいのかな？ん？』
『あ、いやっ、、、、サッセン！！』

確かあの後、きっさんはしょおにお叱りを受け、俺はきっさんとのハグを1週間禁じられた。
1週間になったのは、俺がしょおに必死で懇願したからで、結局3秒ならって許してもらったのだ。

いろんなことが頭を巡って、鼻の奥がつんとした。

「ただいま、しょお」
「ん、おかえり」

ポンポンとしょおのがっしりした小さな手が、俺の頭を撫でる。

ああ、しょおや。

なんでここにいるのかとか、たぶん聞かなあかんことはたくさんあるはずなのに、一つも出てこなくて。

暖かい腕の中で、ずっと、包まれていたかった。

「廉お風呂入って来なよ。お湯もう張ってあるから」
「んー、しょおも一緒に入る？」
　
前みたいなハグ。前みたいな会話。前みたいなしょお。

だからちょっとだけ、俺も前みたいに戻ってみて。

「あー。俺夕飯作らなきゃだから。廉疲れてるでしょ？
ゆっくり入っておいでよ」

そう言われるがまま、1人で風呂に入った。暖かいお湯に浸かったのは久しぶりだった。

しょおがここにおる理由、聞かなくてもええかな。
しょおがここにおるように、引き留めてもええかな。

しょおがここに帰って来たのだと、期待してもええかな。

ちゃぷちゃぷ、お湯が揺れた。