オムライス (ページ27)

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ケーキは1人で食べて、リングは棚の奥底にしまっておいた。2人の思い出も全部、一緒に。
忘れなきゃなんて思っている割には、俺は未練がましかった。

『おい、大丈夫かよ』
『大丈夫やって。次の仕事は？』
『次は、別の局でバラエティだな』
『わかった』

バラエティには積極的に出るようにした。
並行してドラマの撮影と、映画の撮影。
それと専属になっている雑誌の撮影。

深呼吸して、口角上げて、目を細めて、完璧な笑顔。

その分、家に帰ってからどうしようもない喪失感に襲われるようになった。
結局、棚にしまった思い出は元の位置に戻したし、リングはチェーンに通してネックレスにした。

ネックレスにしてからは、撮影でも外せなくなった。
いつも服の中に隠していた。

起きたとき、しょおの温もりがなくて怖くなってからはベッドでも眠れなくなった。幸い、うちのソファーはいいやつだったからそれなりな睡眠は取れる。

それでもどうしようもなくなってからは、酒に溺れた。
ろくにご飯も食べないくせに、酒だけは毎日のように飲むようになっていた。

一度、温もりが欲しくなってことがある。

ホテルのバーで飲んでいて、そこで一緒になった人を誘おうとして、怖くなってやめた。
バーからの帰り道で、しょおに似た人を見たけど、多分気のせいだ。

そうやって、俺の何かが壊れていった。