オムライス (ページ26)

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翌朝。

俺はスマホを抱えたまま寝落ちしていたらしい。

スマホを開けば、昨日見たやつとなんら変わり映えしないメッセージ。

床に落ちたケーキの箱から、保冷剤が溶けて水溜りを作っていた。

『は、はははっ』

惨めな自分に笑いが込み上げてきて、乾いた笑い声が響く。
ケーキを一緒に食べてくれる人も、
リングを受け取ってくれる人もいない。

それらを手放す羽目になったのは、多分俺のせいだ。

俺は約束のために仕事に熱を入れた。
それが1番早くしょおと１つになれると思ったから。

でもそれは、勘違いだったのかもしれない。
しょおはあんな約束、ただ早く１つになりたいと思う俺を宥めるだけの、その場しのぎの言葉にしか思ってなかったのかもしれない。
所詮はただの口約束だ。

やりたいことが見つかったのは、ずっと燻っていたしょおを知ってるから、喜ぶべきこと。
部屋を出ていくことは俺に自立しろと言ってること。

２つのことは、なんとか自分に言い聞かせた。

それでも、

他に好きな人ができたことと、
しょおの物を、処分して欲しいこと、
そして2度と会わないこと。

この３つはどうやっても飲み込めなかった。

こういう時どうしたらいいのか、俺は知っている。

『なぁきっさん、仕事ない？』
『、は？いやまだ1週間ある休みの1日目の明け方だろ！？』

スマホの向こう側で焦るきっさんの声。
ごめんなぁ、こんな朝早くに。

でも、
こうでもしないと叫び出してしまいそうで、

『なんでもいい。映画でもドラマでも、雑誌の撮影でも、バラエティも出るし』
『ちょ、ちょっと待てよ！そんな急に、、、。廉、お前今が大変なのはわかるけど、絶対休んだ方がいいって！！いくら紫耀に出ていかれたからって』

『、なんで知ってんの』

やっば！とより焦るきっさん。

『知っとったん？しょおから、聞いてたん？』
『あ、ああ！紫耀から、昨日の昼間に電話あって、それで聞いたんだよ！』

昼間。つまり、俺がルンルンでケーキを買いに行ったあの時、既にきっさんは知っていたことになる。

込み上げてくるこれが、怒りなのか悲しみなのか分からなかったが、とりあえず深呼吸をする。

『きっさん、知ってて家に笑顔で帰したんやね』
『、、、ごめん』
『じゃあ、そう思ってんなら、仕事入れて』

きっさんが何か続けていたけど通話を切った。

休みなんか、いらない。
仕事に明け暮れれば、しょおのことなんか忘れられる。

そう思っていた。