22（廉side） ページ23
廉side)
朝。
アラームに目を覚ましてソファーから体を起こすと、
まず目に入ってくるのはリビングのローテーブルとソファーを囲むようにして乱雑に放られた酒の空き缶たち。
いつもと同じで、潔癖症と言われている俺でも慣れてしまった。
酒に強い方ではあるが、今朝はズキリと頭が痛い。
冷蔵庫を開けて、サイドから常備してある水と炭酸水を一本ずつ取り出した。
水の方をパキリと開けて一口飲む。
「何してんねやろ、俺」
つぶやいたそれは誰にも拾われることなく床に落ちていく。
以前は独り言なんて言わなかったのに、最近の家での俺は調子が悪い。
スマホがなってマネージャーの迎えが近いことを知らせた。
洗面所の鏡を覗けば、
隈と二日酔いで浮腫んで顔色の悪い俺。
「かわいくなぁ」
あかん、また独り言や。
コンディションは最高に悪いが、それでも仕事には行かなくてはならない。
準備をして、下で待ってるマネージャーの車に乗り込んで、変わり映えのしない景色を眺める。
前はゲームすることが多かったけど、今はそれをする元気もない。
「廉、大丈夫か？」
「何、きっさん。そんなに顔色悪い？」
「顔色もだけど。その、なんていうか、忙しいだろ？休みもずっと取ってないし」
ミラー越しにきっさんの顔を見れば心配そうに眉が下がっていた。
大丈夫。
モデル出身だけど、一応俳優だ。
まず息を吐く。
それから深く吸って、もう一度吐いたところで口角を上げる。
そして同時に、目を少しだけ細める。
ほら、そしたら微笑んだ俺の顔の完成。
表情の作り方くらい、知っている。
「大丈夫よ。心配せんで。二日酔いなだけやし、忙しいのはありがたいことやん」
頑張らなあかんなー、と背を伸ばす。
ミラーに、きっさんの安堵した表情が映った。
「そういえば、今日の収録なんだけど」
「あー、ゲストの思い出の味？やったっけ？」
「そうそう！まあ、廉の場合、ゲストのマネージャーのってなるけどな笑笑」
それでさ、俺この前めっちゃいいお店見つけて、そこのオムライスが美味かったんだわ。で、そこにダメ元でお願いしたらなんと一発OKよ。ほんといい人だよなあ、�盒恭た佑気鵝Ｂ進�1人で切り盛りされててさあ、まじ尊敬しすぎてやばいって感じ。
あ、それで収録前に挨拶行かなきゃだから、
廉も一緒にーーー
ズキズキ痛む頭。なのにミラーには涼しげに笑う俺。
ああ、疲れた。
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作者名：むぎ | 作成日時：2023年5月27日 8時
