オムライス (ページ3)

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「あの、オススメってなんですか？」
優しいハスキーボイスだった。

「あー、オムライスですかね」
「じゃあ、それで」
はーいと笑うと、ハスキーボイスさんもふわりと笑った。

『キッチン髙橋』

俺が育った家で、この辺りでは結構有名な洋食屋だ。
パパとママの自営業だったからこじんまりしてたけど、
土日はたくさんの人が来て、みんなうちのオムライスが好きだった。

今じゃパパとママが歳だからって畳もうとしたお店を俺がなんとか続けてるって感じだけど。

「はい、お待ちどうさまです」
カウンターに座るハスキーボイスさんの前にコトッと皿を置く。
うん、我ながら良い出来。卵は硬め、上にかけるのはケチャップ。昔ながらのオムライスは、うちの看板メニューだ。

「いただきます」
きちんと手を合わせて、ハスキーボイスさんは俺に向かって言った。

うわー、礼儀のいい人だな。てか姿勢綺麗だな。今更だけどイケメンだな。目おっきいし顔ちっさいし鼻高いし。スーツ着てるってことは会社員かなぁ。この辺だとオモチャの会社があったっけな。

そんなに口いっぱいに入れて大丈夫かな。あ、詰まらせて水飲んでるじゃん。リスみたいに頬張って、あの大きな目がキラキラしてて。

食べてる顔、好きだな。

うちの店に初めて来たハスキーボイスさん。
名前も
どんな人かも、
何にも知らない。
でも、

俺の作ったオムライスをあんなに美味しそうに食べてくれる人に、

俺は恋をした。