4話 ページ5
それからエルマとヒルマはある国の二人の夫婦の間に双子の娘として生まれた
けれどエルマは元素力に恵まれることはなく剣に愛され、ヒルマは元素に愛され剣に愛されることはなかった
今二人は唯一手元にあったメモ帳に記されている故郷『信仰の都エスト』を目指して旅をしている
『んぅ……』
意識がだんだんはっきりしてきて、薄らと明るい光が注がれていることが分かった
鳥の囀りのおかげで今が朝だということに気付かされる
『あれ……ここは……?』
上体を起こすと、今まで知っている景色と違った
最後に見た記憶は、大きな崖の上に立っていると、足場の岩がガコッと崩れてお姉ちゃんを庇いながら真っ逆様に落ちていったことだけだった
けれど目が覚めれば、どこかのベッドの上で眠っていた
隣にはお姉ちゃんがスヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てていた
状況は複雑なことになってしまったけれど、とりあえずは今どうなっているかがわからないから、ゆさゆさと体を揺らして起こす
すると、肩までの長さでほんのり桃色がかった髪の少女の瞼がピクリと動き、ゆっくり開くと真っ赤なルビーの瞳が見えた
エルマ「んぇ……えっと……あなたは……?」
『私はヒルマって言います。ごめんなさい、今は状況が説明できなくて……
とりあえずあなたの手にある日記を見てみてください。
それなら一回で今の状況と私のことはわかると思うのです』
何もわかっていないような彼女に、一冊の分厚い本を手渡す
毎日付けている日記帳
彼女は不思議そうな顔をしながらペラペラと一枚ずつページを捲っていくと、記憶を思い出したようで、いつもの口調に戻った
エルマ「うん、全部思い出したよ。ありがとう、ヒルマ」
『いいえ、お姉ちゃんが戻ってきて嬉しいです。
でも今はとりあえず状況を確認しましょう。安全確保が先決なのです』
エルマ「そうだね。でも、ここはどこなんだろう……?」
『さあ……それは私にもわかりません。とりあえず、外見てきます。
お姉ちゃんはここにいてくださいね』
そう思って布団の上から立ち上がって外へ行こうとした時、足に力が入らず膝から崩れ落ちる
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作者名:ゆっきーぷ | 作成日時:2023年12月1日 18時