【HQ】鈍感少女番外編3 (ページ46)

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及川バースデー 5 ページ46

「うーん、じゃあこうしよう」

花巻は、ピンと人差し指を立てた。

どうやら、何かを閃いたらしい。

「今日から1週間、若葉は及川に何を言われてもオール無視。黙っていれば、言うこともねえだろ？」

大は小を兼ねる理論で、限定的な質問だけでなく、及川の言うこと全てに無視をする、という提案である。

え、とAは困惑したように黙り込んだ。

いくら腹立つことをされようと、彼はAの大切な幼馴染である。

そんな彼を、誕生日を迎えるまでの1週間、ずっと無視をしなくてはならないのは、尋常じゃないほどの苦痛が付きまとう。

しかし、Aは、自分がそこまでしないと、誕生日会のことをうっかり漏らしそうになってしまうことも分かっていた。

更に言えば、現在進行形で自分のことをからかっている及川の思うつぼになるのは、腹が立つことこの上ない。

しばらくネタにされるのは目に見えていた。

それを踏まえると、やはり花巻の提案に乗った方がいいのだろう。

判断力に長けた岩泉が何も言わないのであれば、Aが断る理由はなかった。

「……そうですね。誕生日会のことを漏らすよりは、そちらの方がまだいいと思います」

何も、ずっと無視をするわけではない。

誕生日会までの1週間だけだ。

Aは、腹を括ることにした。

何を言われようとも、及川の話には耳を傾けないようにしようと。

そして、この話を1週間忘れないようにしようと。