【HQ】鈍感少女番外編3 (ページ42)

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及川バースデー 1 ページ42

ジメジメとした梅雨が終わり、蝉が声を上げ始める頃。

終業式を間近に控えた青葉城西高校の空き教室には、岩泉、花巻、松川の姿があった。

HRを終えたばかりの廊下からは、未だ騒がしい声が聞こえるのに対し、なぜかこの教室だけお通夜でもあったかのように静かだった。

そう、試合では決して心が折れることのない岩泉が、珍しく頭を抱えているのだ。

「マジで助けてくれ……」

「いや、それ俺らでどうにかなんの？」

椅子に座り、机に肘をついて頭を抱える岩泉に、花巻が立ったまま苦笑する。

「じゃあ、言い方を変えるわ。どうにかしてくれ」

「言ってること変わってねえのよ」

事の発端は、来週に迫っているバレー部主将である及川徹の誕生日会の話だった。

もう既に考えていた企画を、マネージャーであるAに岩泉が話したのだ。

当日の流れや何をするのか、時間等確認して情報を共有するためだった。

Aは特に何かあったわけでもなく、普通に頷いていた。

良かったのはそこまでだ。

次の日、Aは及川の前で危うく口を滑らせかけた。

その場にいた岩泉が咄嗟に誤魔化したが、ことあるごとにAは、及川に誕生日会の話を漏らそうとする。

これがわざとなら岩泉も怒っていたところだが、生憎Aに全く悪気はないのだ。

もともと嘘をつくのが苦手なだけだった。

しかし、相手はあの及川徹。

誤魔化しが効かなくなるのも時間の問題だった。