若葉バースデー 11 ページ40
「えっ……?」
Aの顔が一瞬にして無になり、及川の顔が強ばる。
俺は思わず、頭を抱えた。
やっちまった……。
及川が墓穴を掘った。
今ので完全に、Aのためにこの試合を始めたことがバレただろう。
嘘をついたことまでバレてしまった。
最悪だ……せっかく、Aの誕生日だというのに。
「徹、どういうこと……?練習になるからって話じゃ……」
「えーっと……」
及川が言い淀む。
いつもなら自業自得だと放っておくが、流石に今回ばかりはそれも出来ない。
なんとかAが納得する説明をしなくてはならない。
とはいえ、俺もその辺の言い訳は得意じゃねえ。
むしろ、そういうのは及川の方が得意だ。
Aの表情が歪む。
そんな顔をさせたいわけじゃないのに。
「あー、えっと……若葉!及川さんはな……」
「いいよ、金田一。なんとなく分かってる」
なんとかフォローしようとした金田一をAが止めた。
「理由は分からないけど、一緒にバレーしようとしてくれたんでしょ?前みたいに、私が見ているだけでつまらなそうって思ったの?」
Aは悲しそうに及川に尋ねる。
その言葉に、昔、3人で遊んでいる時も同じことがあったことを思い出した。
俺と及川がバレーの練習をしていて、Aが1人それを見ていた時のこと。
俺と及川だけが楽しかったら嫌だろうと言ったら、Aは怒ったんだ。
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