【HQ】鈍感少女番外編2 (ページ31)

今日:15 hit、昨日:1 hit、合計:5,596 hit

若葉バースデー 2 ページ31

そろそろ及川に催促しようとした時、ようやく及川は口を開いた。

「Aちゃん、祝ってる暇があったら練習してとか言い出しそうだよね」

ド正論……。

人の誕生日を祝うことには何も言わないくせに、自分の誕生日となると後回しにしようとする。

いや、そもそも自分の誕生日をなんだと思っているんだ、Aは……。

そう呆れて、ハッとした。

「俺たちにとっては、誕生日はあって当たり前。生まれて歳を重ねたことを、みんなに喜んでもらえる。でも、Aにはそれがない」

「そう、そこなんだよ。でも、Aちゃんがストレートにそれを言ったら、せっかく祝ってくれた他の部員を傷つけることになる」

及川が頷いて、俺の後に続ける。

Aはみんなと同じように、享受することが出来ない。

だからそこに、溝が生まれる。

それが今後の士気に関わるのも良くない。

花巻や松川なんて、特にお祭りごとは好きだし、ノリもいいヤツらだ。

それに、Aのことを気に入っている2人を失望させたくない。

もちろん、Aに嫌な思いもさせたくない。

そうなると、今までのように部室でクラッカーを鳴らすやり方も見直さないといけなくなるかもしれない。

渡の誕生日の時も、Aはクラッカーにビビっていたし、自分がされる側になるのも慣れていないはず。

ただ、Aの「祝っている暇があったら〜」ってやつがあると、本当に何も出来なくなっちまう。