渡バースデー 10 ページ47
その後は、徹たちもガンガン攻めていた。
もう、今までの分を倍にして返しているんじゃないかってくらい。
渡さんが1人だから大変かなって思っていたけど、この方が張り合いがあって面白い。
それに、いつも予想していたところにボールが来るとは限らないもんね。
試合に近い形でやることで、より練習になるんだ。
徹の提案があったからこそ、私の考えたゲームは意味を為した。
少しだけホッとした。
練習時間をフルに使ってやった結果、最終的に勝ったのは渡さんだった。
リベロの力、恐るべし……！
「なんか景品とかないのー？」
結果発表を終えたあと、徹がのんびりとそんなことを言う。
正直、何も考えてなかった。
ゲームを作るのに精一杯だったから。
「……えーっと、ハグでもします？」
パッと思いついたことをそのまま口にした途端、みんなの血相が変わった。
え、そんなに嫌だ……？
「Aちゃん！そんなこと簡単に言っちゃダメでしょ、何考えてんの！せめて彼氏が出来たら……いや、及川さんにならいいけど……アダッ！」
「ダメに決まってんだろうが！」
後ろからハジメが徹の頭を叩く。
花巻さんも、また高速で頷いていた。
ダメ、か……。でも、景品ないしな……。
「景品はなくていいよ。すごく面白かったから。これだけでも最高のプレゼントになったよ」
渡さんはそう言って笑ってくれた。
本当に心からの笑顔だった。
「ありがとう、若葉」
あんなポンコツなゲームでも、私の祝いたいって気持ちは伝わったみたい。
その言葉に、甘えてもいいのかな。
見てるだけでも楽しかったし。
「こちらこそありがとうございます、渡さん」
自然と口角が上がって、私はゆっくり微笑んだ。
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