渡バースデー 9 ページ46
徹の提案に、私は心からびっくりしていた。
この中で、状況判断に優れて提案がすぐに出るのはセッターである徹だ。
だから、私の考えたゲームが不格好であることにもすぐに気づいたはず。
それなのに、それを止めるどころか提案までして続けようとするなんて……。
「……いいの?」
「何が?」
徹は不思議そうに尋ねた。
いや、何が?じゃないよ。
「練習になるのかも分からないのに、こんなゲーム続けていいの?」
すると、徹も驚いたようで、何度か瞬きをする。
そして、その後にクスッと笑った。
「それはいいんじゃない?みんな、結構楽しんでいるよ。ね、渡っち」
「はい」
本日の主役である渡さんが、ふわっと笑う。
渡さんが楽しいなら、それでいいのかな……。
まだ少しだけ不安が残る。
でも、反対側のコートにいるハジメも頷いているし、松川さんもいつものように口の端を吊り上げて笑っていた。
花巻さんは……まだ高速で頷いていた。
そろそろ止めないと、脳みそがスクランブルエッグになるんじゃ……。
なんか前に、頭の振りすぎは良くないみたいなことを聞いたことあるし。
みんなが楽しんでくれているなら、こんな日もいいのかな。
私は、練習になるかどうかってことばかり真面目に考えすぎていたのかもしれない。
全国に行きたいって気持ちはみんな同じだけど、その前にバレーが好きで楽しいからやるんだよね。
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