渡バースデー 8 ページ45
その後はもう、渡さんのポイントだけがひたすら上がっていくゲームになってしまった。
「あ……」
多分、得点差が開いていくたびに、無意識のうちに焦っていたのかもしれない。
花巻さんの打ったボールは、渡さんのいるところとは反対の方向へといってしまった。
思わず声が漏れる。
花巻さんが、慈悲を求めるかのようにこちらを見ていた。
うう……そんな顔されたら、ポイント下げにくくなるでしょうが……。
いや、この際、ここでルール変更するのもあり?
ラリーが続けば続くほど、渡さんにポイントがいく仕組みだし、徹たちからしたら面白くないはず。
むしろ、ここまで付き合ってくれたことの方が凄いかもしれない。
「えーっと……ルール、変更した方がいいですよね?」
おそるおそる聞けば、みんなお互い顔を見合せた。
花巻さんに至っては、高速で頷いている。
あ、これは変更した方がいいかな。
「確かに、今のルールで俺たちが渡っちに勝つのは不可能だね」
徹が苦笑する。
ですよね……私、ゲームメイク能力皆無だ。
変なゲームに付き合わせちゃったせいで、みんなの練習時間を削ってしまったかもしれない。
そう考えると、とても申し訳ない気持ちが大きくなっていった。
やっぱり、普通の練習に戻した方がいいかな……。
気持ちが沈むと、顔もだんだん下を向いてきたその時だった。
「だから、渡っちがいないところにスパイクを打つのもアリにしない?」
徹は私のことを怒ることなく提案した。
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