国見バースデー 8 ページ30
「えーっと……部室にちょっと用事があって……」
「ふーん。でも、多分今みんな着替えてるんじゃね?」
嫌なところを突かれた。
そうだよね、着替えているところにわざわざ行く必要ないもんね。
そのために、男子と女子で着替えるところ分かれているんだもんね。
普段の私だったら、ここで2人に部室での用事を代わりにお願いしたんだと思う。
いや、待って、違うよ。
そもそも、部室に用事なんてないんだよ、私は。
用があるのは国見なんだから。
チラッと助けを求めるように、私は金田一を見たけど、すぐに無理だと悟った。
金田一の顔も青くなっていたから。
これはもう、どう頑張っても誤魔化しきれない。
えーい、こうなったら正面突破するしかない!
私は国見の手を取ると、そのまま引っ張って走り出した。
「いいから行くよ!」
「はあ?おい、お前、走んなって……!」
焦ったような声を出す国見。
また喘息のこと、気にしているんだろうなあ。
確かに、3月は三寒四温っていって、暖かい日と寒い日が交互に続いて体調を崩していた日もあった。
でも、最近は暖かい日が続いているから、ちょっと走ったくらいで酷い発作は起きないはず!
私は、勢いで誤魔化すかのように部室まで国見を連れていった。
「なんで練習まだ始まっていないのに、走らなきゃなんねえの……」
部室の扉の前まで着いた国見がそう零したけど、その割には全然息が上がっていないのはどうして……。
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