松川&矢巾バースデー 1 ページ3
貴方side
「若葉、頼む!」
そう目の前で頭を下げる花巻さんに、私は困惑していた。
どうやら、1週間後の松川さんの誕生日を祝いたいのだそう。
ただ、1年、2年と祝ううちに、企画はすっかりスランプ状態なんだとか。
「俺の誕生日はさ、シュークリーム1個あげれば済むけど、松川の好物チーハンなんだよ。ファミレスに男2人で行くとか悲しいだろ、なんか!」
もう考えることが限界なのか、嘆くように叫ぶ花巻さん。
あまり大声を出すと、他の人に聞こえちゃいますよ?
わざわざ部活の休み時間を狙って来てくれたおかげで、ここにはスクイズを洗っていた私以外誰もいない。
確かに、チーズハンバーグは学校に持ってこられないし、ファミレスか誰かの家で作ってもらったものを出すしかない。
でも、それなら夜ご飯になっちゃうんじゃないかな?
生憎、私は誕生日をあまり祝ってもらった経験がない。
徹やハジメ、金田一や国見は盛大に祝ってくれたけど、親が親だったこともあって、家族で誕生日をどう祝うのか私には分からない。
むしろ、誕生日は親に感謝する日だと教わった。
おめでとう、というのは自分にではなく、産んでくれた親に言うのだと教えられてきた。
徹とハジメに言ったら、真っ青な顔して否定されたけど、私の誕生日はそれが当たり前だった。
だから、花巻さんの求めているものを、私が提案出来るとは思えないんだけどな……。
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