848. 強さに比例するリスク ページ43
コーチも矢巾さんも怒る中、京谷さんはくるりとこちらを向くと一言言い放った。
京「攻撃は強打が決まんなきゃ気持ちよくねえっす！」
おお、そうか……としか言えない。
まあ確かに、バーンって派手に打って決まったらきっと最高に気持ちいいんだろうけど、結果的に今まったく気持ちよくないと思うんだよね。
溝「こんの……！」
監「まあまあ、溝口くん。正すところはいずれ正すよ……」
これには流石の監督も渋い顔。
徹ですら思わずため息をつく始末。
まあ、誰もそう来るとは思わないもんね……。
本人、別に悪気はないわけだし……いや、あるのか？
強いこだわりがあるんだなってことは分かるけど。
そんなミスにいちいち止まっている暇もなく、試合は再開。
徹は再び京谷さんにトスを上げたけど、見事にネットに引っかかってしまった。
インナークロスは確かにブロックに触れさせないから決まったら強いけど、その分ネットに引っかかるリスクも高い。
しかも、京谷さんは基本ボールを打つ強さを臨機応変にコントロールしないから、いつも強打だし、余計にリスクが高くなる。
再びボールが上がると、徹はもう一度京谷さんに上げた。
今上げても、強打ばかりしている上に熱くなっている京谷さんじゃ、またミスしてしまうんじゃ……。
しかし、私のそんな心配を他所に、京谷さんはずーっと体を逸らすと、勢いよく強打を決めた。
溝「やっと決まった……。及川はよく上げましたね。俺なら1度他に回しちまう」
ほっとしながらも、コーチの表情はどこか疲れていた。
確かに、京谷さんという味方ですら完全未知のメンバーが入ったことで、ヒヤヒヤすることは多いと思うけど。
監「粘り強く、そして大胆に。おっかなびっくりしていたら、京谷は使えないからね」
対して監督は落ち着いている。
監督といい徹といい、その鋼メンタルはどこで鍛えたの？
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