【HQ】鈍感少女 vs 仮病少女 2

457. ピリピリ仲間 ページ10

岩泉side


突然聞こえ始めた大きな歌声。

それは耳を塞ぎたくなるほどで、バレーしてるどころじゃない。

ステージを見ると、音駒と思わしき制服を着た女子生徒がマイク片手に歌っていた。

ここはライブ会場じゃねえっての……。

応援歌だかなんだか知らねえが、こんなんやる気出るどころかダダ下がりだ。

最近イライラしてばかりだった俺は、文句を言いにステージに行こうとした。

だが、それより早く動いたやつがいた。

ステージに上がるなり、スピーカーの電源を思いっきり切る。

Aだった。


「ちょっと！何するのよ！」


マイクに声が入らなくなったことに気づいた女が、Aを睨みつける。

それを言いたいのはこっちなんだがな……。

ほんと、いい迷惑だ。


貴「練習の妨害です！試合の邪魔するなら帰って！」


突然、体育館に木霊したよく知る声に、俺は耳を疑った。

正直、Aの口から出た言葉だとは思わなかった。

普段まったく怒らないし、注意する時もやんわりとした口調なのに。

俺と喧嘩した時でも、あんなに声を荒らげたAは見たことねえ。

……そういや、Aも今日はどこかピリピリしてたな。

Aと喧嘩して丸一日が過ぎたが、未だに話せないままでいる。

でも、視界にはいつもAがいて、無意識に目で追っていた。

ちゃんと話さなきゃいけねえことは分かってる。

誤解を解かなきゃいけねえことも分かってる。

だが、なんて声をかけていいのか分からねえ。

女子の胸ぐら掴んでるところ見たら、そりゃ俺が悪く見えるよな。

周りがAの行動に唖然としてる中、俺は1人、どうAに話しかけようかを考えているのだった。

458. 怒るの苦手→←456. 普段の私なら

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す