「愛」ってなんですか!?【轟焦凍】 (ページ30)

今日:21 hit、昨日:27 hit、合計:273,682 hit

124. 病室の白女ページ30

徐々に見えていく小さな病室の中は、真っ白だった。

奥の方にあるベッドの横のパイプ椅子には、同じく真っ白い髪の女の人が座っている。

柔らかく差し込む日光に照らされたその人の髪はキラキラしていて、穢れたものが触れてしまえば消えてしまうのではないかと思うほど儚く、綺麗な人だった。

冬「お母さん」

冬美が声をかけると、ピクっと肩が僅かに動いて、女の人がこちらを向いた。

白い髪に黒い目は、正しく轟の右側そっくりだ。

あまりの綺麗さにAがポカンとしていると、それに気づいた轟の母親が目を向ける。

冷「冬美、そちらは？」

冬「ああ、ごめん。紹介するね。焦凍と同じクラスの、水無月Aちゃん」

貴「こ、こんにちはっ！」

目を奪われてボーッとしていたAは、紹介されて慌ててペコッと頭を下げた。

冷「焦凍がいつもお世話になっています」

ニコッと穏やかに微笑んだ轟の母親を見て、Aはとても轟に火傷を負わせたようには見えなかった。

個性発現の時期の話からは10年も経っているわけだから、その間に精神面も徐々に回復していったのだろう。

冷「それで、今日はどうして水無月さんに？……って、もしかして、その子……」

轟の母親が、Aの抱いている轟に気づく。

貴「あ、この子は、その……」

冷「もしかして、焦凍に赤ちゃんが？」

正しくは"焦凍が赤ちゃんに"である。

どうやら母親も、轟とAの間に子どもが出来たと思ったらしい。

轟の天然は、もしかしたら母親から受け継がれたものかもしれないとAは思った。