「愛」ってなんですか!?【轟焦凍】 (ページ29)

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123. 存在しか知らない母親ページ29

大きく真っ白な建物の前。

入口へと向かっていく、冬美とAと轟。

結局、母親に会えるかどうかはさておき、Aも一緒に病院へ行くことになった。

冬美が受付を済ませ、何やら看護師と話している。

その間、Aは轟と待合室で待っていた。

轟「おねーちゃん、なんで病院に来たの？どこか悪いの？大丈夫？」

まだ母親が入院してることを知らない轟は、Aの膝の上で尋ねた。

本当なら、轟の母親が入院していることは話さない方がいいのかもしれないとも思ったが、元に戻る成功率を考えたら、話すこともやむを得ない。

貴「ううん。今日はね、お母さんに会いに行くんだよ」

轟「お母さん……？僕の？」

貴「そう」

Aが頷くと、轟はぱあーっと顔を明るくさせた。

それだけで、轟の母親に対する気持ちが強いのが分かる。

冬「お待たせ。それじゃあ、行こうか」

貴「はい」

Aは、轟を抱っこして立ち上がり、冬美について行った。

エレベーターを上がり、廊下を少し進むと「轟冷様」と書かれた札が見えた。

初めて会う、轟のお母さん。

冬美が何も言わないということは、おそらく病院側からの許可がおりたのだろう。

轟から聞いた過去で母親の存在は知っているものの、Aは轟の母親のことをそれほど知らない。

どういう容姿で、どういう人なのか？

ワクワク半分、不安半分のAの様子は、まるで新学期が始まる前日の小学生のようだった。

冬「じゃあ、私が先に入るからね」

冬美がそう言い、ガラッと勢いよく病室のドアを開けた。