花巻バースデー 9 ページ33
すると、突然バンと何かを叩く音がして、私の肩が大きく揺れた。
な、なに……びっくりした。
音の要因を目で探すと、どうやら花巻さんが机を思いっきり叩いたらしい。
その顔は伏せているせいで、表情までは分からない。
でも、なんだろう……一瞬で空気がピリついたような……。
「……んで……なんで、及川なんだよ！」
感情任せに出た花巻さんの声は、少しだけ怖い。
でも、そう思ったのも一瞬だった。
今、なんて……？
「は、花巻さん……？」
「なんで外れが及川なんだよ！そこは、本日主役の俺が当たって、注目をかっさらっていくとこだろ！」
え……っと……。
怒ってる理由、そこなんだ。
私たちが何かやらかしたとかと思ったんだけど……いや、事実やらかしてはいるんだけど、そうじゃなくて……。
花巻さんが、そこまで注目されたい人だとは思わなかった。
まあ、普段からノリがいいし、目立つことが好きそうな感じはしてたけど、まさかここまでとは……。
それなら、予め花巻さんが食べるシュークリームにワサビ仕込んでおくんだったな。
いや、でもわざわざ外れを要求するのもどうなんだろう？
チラッとみんなの方を見ると、どうしていいのか分からないようで、困惑していた。
うん、そうだよね……。
本日の主役が外れを引くのは嫌だろうと、みんな思っていたから。
「まあまあ、せっかく後輩が楽しい企画考えてくれたんだから、そんなカリカリしないの、マッキー」
「外れに言われたくねえんだわ」
「ひどいな！」
花巻さんにとっては、羨ましい位置にいる徹の言葉は嫌味にしか聞こえないだろう。
せめて、ハジメか松川さんが言ってくれれば良かったのに……。
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