後輩ちゃん 25 ページ19
「有り得ませんわ、こんなこと……。ただの贔屓じゃありませんか」
ワナワナと震える世羅さんに、矢巾さんは重いため息を吐いた。
この部活に入ってから、「贔屓」なんて言葉は聞き飽きるくらい言われてきた。
贔屓も何も、みんなはちゃんと練習をして、私はそのサポートをしているだけなのに。
これのどこが「贔屓」なんだろう?
「あのな、若葉は中学の時からマネージャー経験があるんだぞ?約5年の経験者と新人、どっちに説得力があるかなんて明白だろ」
呆れたまま、矢巾さんはそう返す。
それだけ私のことを信用してくれているのは、とても嬉しいけど……。
チラッと私は世羅さんの方を見た。
「たとえ経験者であろうと、言ってることが全て正しいとはならないと思いますわ」
ああ……平行線だ。
これじゃあ、一生結論が出ない気がする。
でも、ここで折れてしまえば、全て世羅さんの思いどおりになってしまうし、断れば悪い噂とか流さないか少し心配。
矢巾さん、どうしよう……。
「確かにそうだ」
難しい顔をしていた矢巾さんは、何かを決意したように顔を上げた。
世羅さんの言葉を肯定したことに心臓がドクンと跳ねて、私は祈るような気持ちで矢巾さんを見る。
「経験したからといって、全て正しいことが出来るわけじゃない。それは俺も若葉も、ここにいる全員がそうだ。だから俺たちは、お互いを信じて助け合うんだ。間違えても誰かが指摘できるように。その間違いを、正せるように」
静かに話す矢巾さんは、もうすっかりみんなの前に立つ先輩だった。
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