【HQ】それは席替えから始まった【岩泉一】

June.6 ページ27

貴「ねえ……勝ちたいの？負けたいの？どっちよ？」


ワイワイと騒がしい体育館の中。

ある一角だけ険悪な雰囲気が流れている。

久しぶりに低い声を出した私の目の前にいるのは、いつメンの結花。

結花は私の言葉に答えることもなく、黙って智夏の方へと行ってしまった。

私が小さく舌打ちをした時、何事かと智夏がやってきた。


今日は、3人1組でダブルスを組んでのリーグ戦。

もちろん、試合結果は成績に反映される。

体育なんて元からそんなに得意じゃないし、出来ることなら得意な卓球で稼いでおきたかった。

でも、もう梅雨明けに近く体育館の中も蒸してきた時だった。

智夏が体調不良になり、少し休むことになってしまったのだ。


智「少ししたら良くなると思うから、それまで2人で頑張って」


大丈夫かな、と思いながら、結花と試合に出たんだけど……結花、本気出してないな。

部活でやってたから分かる。

本気出してるか、そうじゃないかを見分けるのは簡単。

ボールが来ても棒立ちだし、何より下半身で動いて打つスポーツなのに、立ち位置から全く動かない。

流石に直接本気出してないでしょ、なんて言えないから黙ってるんだけど、そろそろ限界。

成績に関わるし、自分が経験者だからそれなりにプライドとかもあって、素人にはあまり負けたくない。

他人が本気出す出さないは、普段ならその人次第だから放っておくんだけど、ダブルスは私も影響されるから嫌なんだよね。


そして、極めつけは試合の合間の練習時間。


貴「結花、練習しよ！」

結「……えー」


えーって……は？なんで？

結花が初心者なのは知ってる。

だから練習しよっつってんのに！

そこで、私はプチンと切れてしまったのだ。


と同じ話を智夏にも説明する。


智「まあまあ、落ち着いて。私、もう出られるから出るよ」


そう言った智夏は、さっきよりも顔色が良くなっている。


それで結局、残りの試合は智夏と出た。

結花は、自分から審判をやってた。

ホントに卓球やりたくないなら、別の選択授業にすればいいのに……。





そして、卓球の授業が終わってから、3人で過ごすことはほとんどなくなった。









私が結花を避け始めたから＿＿

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