【HQ】それは席替えから始まった【岩泉一】

May.10 ページ21

貴「お待たせ」


数分後、保健室の先生にお礼を言って外に出ると、私と自分の荷物を持った岩泉がいた。


岩「お前、着替えんの早いのな」

貴「普通じゃない？」

岩「いや、早いわ。ほんとに女子か？」

貴「どういう意味だ、コラ」


睨むと、岩泉はサッと目を逸らした。

最近多いな、目逸らすの。


貴「てか、荷物持つよ。私のだし」

岩「いや、俺が持ってく」

貴「流石に持てるって！」


私は、自分のバックを岩泉から取る。

そのままバス停まで2人で歩いた。

ちょうどバスが来る時間だったらしく、バスはすぐにきた。

中には、もう会社帰りの大人も何人かいる。

私が座った座席の隣に岩泉が座った。


岩「お前、バス通学だったんだな。どんくらい乗ってんだ？」

貴「大体20分くらいだよ」

岩「割とすぐだな」


そこで会話が終わってしまった。

いつもあんなに喋ってるのに、今日は何故か話が続かない。


岩「……なあ」

貴「ん？」

岩「いつも一緒にいる2人、保健室に来たか？」

貴「いや、来てないんじゃない？寝てたから分かんないけど」

岩「そうか。友達なのに、アイツら心配とかしねぇのかよ」

貴「そんなんじゃないと思うよ。ほら」


私はそう言って携帯を見せた。

さっきRINEが智夏と結花から来ていたのだ。

そこには「大丈夫？」と書かれている。


『次は〜烏野高校前〜烏野高校前〜』


貴「あ、ここ！」

岩「ここか？お前、烏野の方が家近いじゃねぇか」

貴「そうだよ。でも、青葉城西に行きたかったからさ」


それ以上は言わなかった。

嫌いなやつが烏野に行ったからこっちに来たなんて、岩泉は知らなくていい話だ。

バスから降りて暫く歩くと、もうすぐ私の家だ。


貴「もうそこが家だから、大丈夫。ありがとね、岩泉」

岩「おう、そうか。今日はゆっくり休めよ」


そう言って、岩泉は私の頭をクシャッと撫でた。

慣れないことに、少しドキッとする。


岩「あ、悪い！いつものくせで」

貴「いつものくせって、岩泉兄弟いるの？」

岩「いや、俺は一人っ子だ。後輩によくやるんだよ」


後輩と聞いて、今日見たあの2人が思い浮かんだ。

きっと、岩泉は後輩思いなんだろうな。


貴「そっか。いい先輩だね」


言ってしまってから、変な空気になってしまったと悟る。


岩「お前、それどういう……」

貴「今日はありがとう！また、明日ね」


私は慌ててそれだけ言うと、家に入った。

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