【HQ】鈍感少女番外編6 (ページ29)

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そうだ、兵庫に行こう 27 ページ29

震える手に、何かが握られた。

それを口元へと持っていかれる。

私の手には誰かの温かい手が添えられていて、それだけ自分の手が冷たいことがなんとなく分かった。

息を吸うタイミングで、何かが口の中に入ってくる。

分からないけど、胸の奥がだんだん楽になっていくのが分かった。

次に気づいたのは、背中を擦る手だった。

でも、誰だかは分からない。

その次には、視界。

自分の目の前に、見覚えのある顔が見えて、少しだけ肩の力が抜けた。

徐々にハッキリしてきて、表情まで見えるようになってきた。

心配そうにこちらを覗き込む、瑜伽さんがいた。

見知らぬ場所だと思ったその瞬間、少し遠くに金髪の男の人が見えて、そういえばここは宮城じゃなかったと思い出す。

宮城じゃないから、あの人はいない。

その結論に至った瞬間、スっと身体が軽くなった。

「ゆ……が、さん？」

「そうよ、若葉さん。大丈夫。もう、大丈夫だから」

柔らかく微笑んだ瑜伽さんを見て、私は本当に大丈夫なんだと思った。

呼吸が落ち着いてきて、思いっきり誰かに寄りかかっていることに気づいた。

離れようと、床に手をついて体重をかける。

「まだ危ないから、そのままにしとき」

床についた手の上から、自分よりも大きな手に包まれた。

頭の上から聞こえた声にようやく、私の身体を支えてくれていたのが、背中を擦ってくれていたのが、北さんだったのだと分かった。