だから、生きて。 (ページ7)

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自分で言った言葉で気づいた。

さっきから翔馬の言うことはどうにもおかしい。

そのくせ本人は真面目に言っているからタチが悪い。

冗談だったら笑い飛ばしてあげたけど、そうしないのは、どうも翔馬は本気そうなのだ。

明らかに変なにはさっきから気づいている。

「ごめん。」

ドキッとした。

咄嗟に目を逸らしたのは、私に向く表情が変わったのに気づいたからだ。

「ごめんA。何もわからなくてごめん。怒らせたのなら謝るけど、でも嫌いにならないで？」

声は消え入りそうなのに、私の手を掴む指先には力が込められた。少しだけ、奥歯を噛み締めた。

馬鹿らしいと思うなら、この手を振り払って逃げて、また屋上まで戻って足を踏み出せばいい。

でも、どうしても、手を振り払うことはできない。

『大体自転車で行くって、どれだけ時間かかると思ってんの？今日一日じゃ無理だよ。ぶっ通しで漕ぎ続けるわけでもないし』

「時間がかかるね....だから無理なの？」

『そうだよ、遠いもん。大変だよ。』

「でもそれって時間がかかるってだけなんでしょ？時間をかければいけるんでしょ？大変だけど。」

『まあね、大変だけど。』

「だったらいつかはたどり着くんでしょ？」

翔馬が少しだけ目を細めて私を見つめた。

「じゃあ、一緒に来てよ。A。」

汗ひとつかいていない翔馬の額で、重めの前髪が、風に揺れている。

「俺は、きみがいないとダメなんだ。」