だから、生きて。 (ページ6)

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行くお金もないのに、それでも足を止めない翔馬。

『当たり前でしょ。お金が無いとバスも電車もタクシーも乗れないんだよ？それなのにどうやって行くの？無謀すぎるよ....。』

ここから海に行くのには、何かしら交通機関を使う必要がある。

それにお金がないと乗ることはできないなんて小学生でも知っている。

「....」

翔馬が考え込むように口を噤んだ。

この人は一体何を考えているのだろう。

「ねえ、A」

翔馬が足を止めてくるりと振り向いた。

「Aって、自転車乗れる？」

『え？』

「だから自転車」

『自転車....』

「乗れる？」

『まあ、乗れるけど....』

「なるほど....」

だからなんだと言うんだ。今はそんなこと関係ないはずだけど。

『あのさ、本気で海に行きたいならもっとちゃんと方法考えなよ』

「考えてるよ。真面目に。本気で行きたいんだもん。だから確認したんじゃん。」

『何を』

「Aが自転車に乗れるか」

『だからそれがどうしたの？』

「自転車って近くにあるの？」

『あるけど、そこに』

いつも通り自転車で来たからいつものところに止めてある。

「ふーん」

何故か満足気に微笑んで、翔馬はまた歩き出す。

いや、無い。無いと信じたい。まさかとは思うけど、ね？

『ねえ、翔馬』

「ん？」

『まさか、海まで自転車で行く気じゃないよね....？』

「うん、そうだよ。それならお金要らないでしょ？」

いや、確かにお金入らないけど。

『いや無理に決まってるでしょ？』

流石に足を止めて声を上げた。

翔馬も驚いたのか立ち止まって振り返った。

「どうしたのA。急に大声出して。びっくりするじゃん。」

『いや、こっちがびっくりだよ、どうしたもこうしたも、ここから海になんて行けるわけないじゃん。』

無茶苦茶すぎる。車ですら何時間かかるか分からないのに、自転車で行こうだなんて無謀すぎる。

「え、そうなの？無理なの？」

『無理だよ。どれだけ距離あるか知ってる？』

「うん、すごい遠いことは知ってる」

『そうだよ、すごく遠いんだって。そんなところ自転車で行けるって本気で思ってるわけ？』

「分からない。行ったことないし、どうなのかな。」

『いや、どうなのかなって、そんなこと考えなくてもわかるんだって、普通。』

そう普通なら。